2020年8月7日(金)
核兵器禁止条約求める声
背向ける安倍氏 首相の資格なし
「私たちの生あるうちに核兵器のない世界をどうか現実のものとしてください」。6日に行われた、広島県の被爆者7団体と安倍晋三首相との面談で出された切なる訴えです。それに対し、安倍首相は、「核兵器廃絶のゴールは共有しているが、わが国のアプローチとは異なる」などと明言し、核兵器禁止条約の署名を否定しました。被爆75年を迎えた広島では怒りが広がっています。
安倍首相は、核保有国と非保有国の「橋渡し」に努め、核兵器廃絶に向けた「国際社会の取り組みをリードする」と繰り返し主張していますが、トランプ米政権による核強化や、アジアへの核配備を支持する立場です。「橋渡し」と言いながら、核保有国の立場に立っているのは明白であり、「橋渡し」はごまかしです。
一方、広島市の松井一実市長は平和記念式典で、核兵器禁止条約とNPT(核不拡散条約)について、「ともに核兵器廃絶に不可欠な条約であり、次世代に確実に継続すべき枠組みである」と強調。核兵器禁止条約に署名・批准し、唯一の被爆国として世界に連帯をよびかけてほしいと訴えました。しかし、安倍首相は平和記念式典のあいさつで、同条約については一切言及しませんでした。
平和記念式典では、国連のアントニオ・グテレス事務総長は、「核兵器禁止条約は軍縮体制のさらなる柱であり、私はその発効を心待ちにしています」とメッセージを寄せました。核兵器使用を禁止する条約の発効は、被爆者も被爆地の首長も、国際社会も一致した望みです。同条約に背を向ける安倍氏に唯一の被爆国の首相の資格はありません。
広島では、提訴から5年になる「黒い雨」訴訟で原告84人全員を救済する広島地裁判決に喜びが広がっています。式典のあいさつや被爆者との面談で、安倍氏が「控訴を断念する」との言明を期待されていましたが、明言しませんでした。その姿勢に、被爆者から「被爆国の首相か」と失望と怒りが渦巻いています。(石黒みずほ)