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2020年8月7日(金)

主張

コロナ禍の保育

基準引き上げへ踏み出す時だ

 新型コロナウイルス感染が広がるもと、保育現場で苦闘が続いています。保育施設は、子どもと職員の密着・密接が避けられません。子どもの成長・発達を保障することと、感染防止対策の徹底を両立することは、並大抵の努力ではできません。もともと職員配置や施設面積で余裕のない施設では、職員の業務が激増するなど矛盾を広げています。日本の保育が抱える構造的な問題がコロナ禍で浮き彫りになる中、よりよい保育を実現する取り組みが一層重要です。

あらわになった立ち遅れ

 2月の全国一律休校の時、保育所や認定こども園などは原則開所することが求められました。4~5月の緊急事態宣言の際は、原則休園としながらも、医療従事者など保育が必要な職種の子どもは受け入れることが要請されました。

 かつて経験したことのない複雑な対応が必要とされる状況になっても、現場では、登園してくる子どものためにできることを考え、工夫し、寄り添う保育と感染対策に献身的な努力を重ねてきました。

 緊急事態宣言解除後に子どもたちが戻った今も、おもちゃなどのこまめな消毒などの業務の負担は減っていません。感染をさせない、しないための緊張感も続きます。プールや運動会などの行事をどうするかなど悩みは尽きません。

 一方でコロナ禍は、日本の保育環境の立ち遅れを目に見える形で示すことになりました。登園自粛の間、子どもの登園率が通常時より大幅に減ったため、一人ひとりの子どもと向き合い、ゆとりをもって保育をすることが可能になった施設が生まれました。「本来こういう保育をしたかった」と言う保育士は少なくありません。

 現在の保育士配置基準は0歳児3人に保育士1人、1~2歳児6人に1人、3歳児20人に1人、4~5歳児30人に1人です。また面積基準は、2歳児以上は園児1人当たり1・98平方メートルと1948年の制定時のままです。この基準ではよりよい保育はできないと多くの保育関係者たちが長年引き上げを求め続けています。独自上乗せする自治体もありますが、国は基準を変えようとしません。

 「自粛解除で子どもたちが増え、かみつき、ひっかきがいっきに増えた」。保育士からこんな声も上がっています。いまの基準がいかに劣悪な保育環境を強いているかを現場は改めて実感しています。「面積や職員配置など低い保育基準を見直しもせず、『3密』を防ぐ努力だけを求めないで」との園長らの訴えは当然です。今こそ、国は基準を引き上げるべきです。

 保育関係者の運動で、2次補正予算では人件費にも使える1施設50万円が確保されましたが、まだまだ足りません。「慰労金」を求める声も切実です。国は低すぎる賃金基準を見直し、抜本的な処遇改善を図るべきです。保育者の定期的なPCR検査も求められます。

明日への希望を育み

 今年で52回目の全国保育団体合同研究集会(保育合研)はコロナの影響で中止となりましたが、「合研の灯を消さない」と8日にオンライン開催されます。こういう状況だからこそ、語り合い、学び合おうと主催者は呼びかけています。新たな保育のあり方を模索する全国の仲間がつながり、明日の保育への希望を育む機会になることを期待します。


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