2020年8月3日(月)
原水爆禁止2020年世界大会
国際会議 主催者声明
原水爆禁止2020年世界大会・国際会議で2日、発表された同大会実行委員会の主催者声明は次の通りです。
広島・長崎に原爆が投下されてから75年、COVID―19パンデミックのもとで開催された原水爆禁止2020年世界大会は、核兵器のない世界の実現を求めて行動するすべての皆さんに心よりの連帯のあいさつを送ります。
核兵器は今なお全人類の脅威です。被爆者と核実験被害者は長年、自らの体験を通じて、核兵器の使用がもたらす非人道的な結末を訴えてきました。広島と長崎では、その年の末までに20万人をこえる市民が命を奪われ、かろうじて生き延びた人びとも後遺症や社会的差別と貧困に苦しみ、その次の世代も健康への不安をかかえています。
核兵器は「悪魔の兵器」です。いかなる理由によっても、いかなる場所でも、ヒロシマ、ナガサキを繰り返させてはなりません。私たちは、この危険を一刻も早く根絶するために、ともに行動することを世界の人びとによびかけます。
COVID―19パンデミックによって、世界ではすでに70万人近くの人びとの命が奪われ、貧困層はじめ移民・難民・先住民など社会的弱者のあいだでの感染拡大がとりわけ深刻化しています。自然環境の破壊、貧困と格差、医療・福祉の削減などを招いてきた新自由主義的な政策が、厳しく問われています。世界的な貧困率が上昇する一方で、世界では約2兆ドル(200兆円)が新たな核兵器開発を含む軍事費についやされています。軍備の増強よりも、生活と雇用、営業、公衆衛生のために、資金が使われなければなりません。
国連は今日の事態について、「国連の75年の歴史において、莫大(ばくだい)な破壊力を持つ兵器により安全保障を確保しようとする愚かさがこれほど明らかであったことはありません」と表明しています。
私たちは、軍事力による国家の「安全保障」から、国民一人ひとりの命と安全、そして尊厳を最優先する政策への転換を強く求めます。
核兵器は全人類の生存を左右する脅威です。科学者たちは、わずかな核兵器の使用でも、核爆発による幾百万の死に加え、気候変動がもたらされ、全世界的な飢饉(ききん)が引き起こされると警告しています。
その破滅的影響は、ヒロシマ、ナガサキを大きく上回るものとなります。それは国境を越え、現在と将来の世代の命と健康を脅かし、経済と社会に致命的な被害をもたらします。女性は、より深刻な影響を受けることも明らかになっています。
いまなお1万4000発近く核弾頭が存在し、2000発近くの核ミサイルが直ちに発射できる状態にあります。意図的な使用の危険に加え、偶然や誤算によってさえ、核爆発が起きかねない状況が続いています。幸運にも、最悪の事態を回避してきましたが、核兵器が存在する限りその危険は続きます。
人類の生存をこれ以上、「運」にゆだねるわけにいきません。
核兵器やパンデミックとともに、気候変動や貧困問題など、グローバルな危機を解決するためには、国際的な協力が欠かせません。しかし大国は、「自国優先主義」を振りかざし、対立を深めています。
さらにアメリカもロシアも、核兵器を使用する姿勢をつよめ、新たな兵器の開発、配備を行なっています。他の核保有国も「核抑止力」に依存する姿勢を変えることなく、その近代化を進めています。
「抑止力」の名による核兵器への固執は、新たな拡散と対立の原因となっており、こうした行為は、人類をさらなる危機にさらすものでしかありません。
核兵器廃絶の緊急性はいっそう明らかとなっており、これを求める世界的流れはさらに前進を続けています。世界の122カ国は2017年7月、市民社会と力をあわせて、核兵器禁止条約を成立させました。核兵器をはじめて違法化したこの条約は核兵器廃絶への重要な一歩にほかなりません。核兵器禁止条約を成立させた国々と市民社会の運動はこの3年間、核固執勢力を追いつめてきました。禁止条約の批准は40カ国となり、発効に必要な50カ国まで10カ国と迫っています。条約の発効はもはや時間の問題です。そうなれば、核兵器廃絶をめざすたたかいも、新しいステージへと前進します。
発効50年を迎えた核不拡散条約(NPT)は、米ロ英仏中の五大国による永続的な核保有を認めたものではありません。2020年NPT再検討会議は延期されましたが、これまでの会議の合意(2000年「核兵器廃絶の誓約」、2010年「核兵器のない世界の枠組み作り」)を確認し、その達成へさらに前進しなければなりません。核兵器禁止を拒否し、核軍縮を先送りしてきた核兵器国の態度が厳しく問われています。
私たちは、各国が平等な立場で協力する世界、国連憲章がめざす平和の秩序を求めます。力による紛争解決の企てはただちに停止され、平和的手段による解決をめざすことが必要です。そして、その新しい世界は、「核兵器のない平和で公正な世界」でなければなりません。
唯一の戦争被爆国である日本政府の責任は重大です。日本政府がすみやかに核兵器禁止条約に参加するとともに、「核兵器のない世界」をめざす世界的流れの先頭に立つことを求めます。
アジアと世界の平和を求める流れに逆行する、沖縄・辺野古の米軍新基地建設や憲法違反の敵基地攻撃など自衛隊の任務拡大、さらには憲法第9条の改定など、日米軍事同盟のもとで日本を「戦争する国」にする動きに反対します。
私たちは、以下の方向で運動にとりくむことをよびかけます。
――被爆者の声を聴こう。被爆者、核実験被害者の証言や原爆パネル展をはじめ、核兵器使用の非人道的な結末を世界各国で普及する活動を強化する。国連と各国政府が、これらの活動を推進、支援することを訴える。
――すべての国に核兵器禁止条約に参加し、核兵器の完全廃絶にむけた行動を開始することを求める。
とりわけ核保有国や「核の傘」に依存する国々では、条約参加を政府に求める運動を強化する。
――すべての国、とりわけ核兵器国に対し、NPT再検討会議のこれまでの合意と約束を実行し、NPT第6条の核軍備撤廃交渉の義務をはたすことを求める。
――第75回国連総会(2020年9月~)と軍縮審議、次回NPT再検討会議などを節目に、核兵器のない世界の実現をめざして、国連、核兵器の廃絶を求める各国政府と市民社会との共同を発展させる。
――軍事費の削減、外国軍事基地の撤去、軍事同盟の解消、枯葉剤など戦争被害者への補償と支援、平和教育の推進など、反戦・平和の諸課題にもとづく運動との共同を発展させる。
――2020年8月6日から9日まで、核兵器廃絶を共通の要求とした「平和の波」行動を成功させる。
――ヒバクシャ国際署名をはじめ、「核兵器のない世界」を求める運動を、くらしと命、人権を守り、気候変動の阻止、原発ゼロ、ジェンダー平等、自由と民主主義を求める運動など広範な社会運動と連帯してさらに発展させる。
COVID―19パンデミックのもとで、私たちは従来と異なり、原水爆禁止世界大会をオンラインで開催しました。私たちはさまざまな試練に直面しながらも、この大会の準備と開催を通じて、新たな条件を汲(く)みつくして、運動を発展させることが可能であると確信しています。「核兵器のない平和で公正な世界」の実現をめざして、国際的にも、各国でも、連帯と共同をさらに広げていきましょう。被爆国日本の運動は、被爆者とともに、そして未来を担う若い世代とともに、この行動の先頭に立つ決意を表明するものです。