2020年8月1日(土)
主張
景気後退の認定
消費税10%増税の誤りは明白
内閣府が、2012年12月から始まった景気拡大局面が18年10月で終了し、後退に転じたと認定しました。安倍晋三政権は今年初旬まで「回復」と言い続け、一時は「戦後最長」とも自慢していました。しかし、実際の経済は大きく異なっていたのです。重大なのは、そのような景気後退局面にあった19年10月、消費税率の10%への引き上げを強行したことです。それが日本経済をますます冷え込ませ、大不況を招いたことはもはや隠しようがありません。安倍政権の景気判断の偽りと、大失政が厳しく問われます。
大失政への反省迫られる
景気の拡大や後退は、経済学者や統計学者、エコノミストらでつくる内閣府の「景気動向指数研究会」(座長・吉川洋立正大学長)が議論し判定します。30日の研究会は、12年12月から始まった景気拡大局面から後退局面に転換したのは18年10月と認めました。景気拡大期間は5年11カ月で途切れたことになります。戦後最長とされる「いざなみ景気」(02年2月から08年2月)の6年1カ月には届いていませんでした。
ところが、茂木敏充経済再生担当相(当時)は19年1月に「戦後最長になったとみられる」と発言し、首相も「戦後最長」の景気拡大だと盛んに繰り返しました。同年10月には、国民の不安や懸念の声に逆らって消費税率の10%への増税を強行し、経済に大打撃を与えました。約1年前から景気が下降していた中で、国民に重い負担を強いる大増税を行うという政策判断が根本的に間違っていたことを改めて浮き彫りにしています。
景気拡大局面が18年10月で終わったとされるのも、もともと弱かった個人消費が14年4月の消費税率の8%への引き上げで痛めつけられた上、米中貿易摩擦などで、“頼みの綱”の輸出の落ち込みが顕著になったからです。14年度の国内総生産(GDP)は前年度比マイナス0・4%に沈みました。
そもそも国民には、「景気拡大」などという実感はありません。12年12月に、政権に復帰した安倍首相は、異次元の金融緩和と財政出動、「規制緩和」を柱とする「アベノミクス」を推し進めました。その政策の下で、大企業は内部留保をため込み、大資産家は株高で大もうけを続けました。その一方、労働者の実質賃金は下がり続け、家計の消費支出は伸びが抑えられました。貧困と格差を拡大したのが「アベノミクス」の実態です。
この期間の実質経済成長率は年率1・1%程度にとどまり、「いざなみ景気」の約1・6%を大幅に下回ります。暮らしと経済を壊した姿が鮮明になる中、最近は首相も「アベノミクス」をほとんど口にしません。安倍政権は大失政を根本から反省すべきです。
5%減税への決断不可欠
新型コロナウイルス感染拡大で、暮らしと経済は危機的状況に直面しています。安倍政権が行った2度にわたる消費税増税と「アベノミクス」によって、すでに弱体化しているところに、コロナが追い打ちをかけているだけに、ダメージの大きさは計り知れません。
コロナ感染拡大抑止のための検査・医療体制の強化、暮らしを支える緊急対策とともに、各国で実施に踏み切っている消費税減税が必要です。消費税率の5%への引き下げの決断を急ぐべきです。