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2020年7月25日(土)

主張

スーパーシティ

「未来都市」の幻想振りまくな

 先の通常国会で成立したスーパーシティ法(改定国家戦略特区法)の9月施行が近づき、警戒の声が上がっています。スーパーシティは、最先端の技術を使った都市づくりを首相官邸主導の特例的な規制緩和で行います。安倍晋三政権は「まるごと未来都市」とばら色に描きますが、個人情報が勝手に使われ、監視社会につながりかねない危険性が浮き彫りになっています。政府は8月に基本方針案をつくり、9月に自治体の公募を開始し、年内に実施区域を指定する計画です。新型コロナウイルス感染危機のさなかに実施を急ぐべきではありません。

同意ない個人情報提供も

 AI(人工知能)やビッグデータなどの先端技術を利用して遠隔医療、遠隔教育、自動運転、キャッシュレス決済、ドローンによる配達、顔認証を使った交通機関の利用などのサービスを一括して住民に提供するというのがスーパーシティ構想です。

 政府は便利さを売り込みますが、住民は住所、年齢、マイナンバー、顔写真、健康状態、預金口座をはじめ詳細な個人情報を実施主体に提供する必要があります。実質的に実施主体となってこれを一手に管理するのは大企業です。

 実施主体は国や自治体に住民の公的データの提供を求めることができます。政府は一応、本人の同意が必要と言いますが、個人情報保護法制は「相当な理由」「特別な理由」があれば、国は個人情報を本人の同意なしに他の行政機関や地方自治体、地方独立行政法人などに提供できると規定しています。国会審議の中で政府は、何が該当するかは「個別に判断される」と答弁しており、基準はあいまいです。本人が知らないうちに個人情報が実施主体の企業に持って行かれるおそれがあります。

 集められた個人情報は実施主体が一元的に管理することによって住民一人ひとりについて行動や買い物の履歴、思想・信条、交友関係などの記録となり、個人の行動を監視することも可能です。

 スーパーシティには住民の意思を反映する仕組みが欠けています。特区担当相、首長、事業者、住民代表から成る区域会議が基本構想をつくるにあたって住民の意向を確認することになっていますが、誰を住民代表とするのか、何を住民の意向とするのか、規定はありません。形だけ住民に意見を聞いて推し進めることができます。

 欠陥だらけで危ういスーパーシティを安倍政権はコロナ危機を追い風にして推進しようとしています。今月、閣議決定された2020年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)は「早期実現」を明記しました。

コロナ危機の利用は論外

 スーパーシティに関する政府の有識者懇談会の座長、竹中平蔵パソナグループ会長は「コロナ下でこれまで困難だった多くの取り組みが進展しつつある」として「実態先行」を強調しました。

 先端技術を使った公共サービスのデジタル化は、個人情報保護に十分な注意を払った上で、住民の合意が不可欠です。もともとスーパーシティ法は「コロナ危機のさなかに不要不急」として野党が反対した法律です。コロナ危機の利用は論外です。危機対策に自治体や住民が懸命に取り組んでいるときに進めるべきではありません。


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