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2020年7月18日(土)

主張

コロナ感染再拡大

重大局面に対策見合ってない

 東京都内での新型コロナウイルスの1日あたりの新規感染者数が293人に達し、過去最多を更新しました。感染者増は東京や首都圏にとどまらず、全国的に再拡大の様相を強めています。ところが、安倍晋三政権の対策は、内容もスピードも事態の深刻さに全く見合っていません。とりわけ、感染をさらに広めかねない「Go Toトラベル」事業の前倒し実施に固執したことは、国民に不安と混乱をもたらしています。コロナから国民の命と暮らしを守るための姿勢が根本から問われます。安倍政権は姿勢を改め、感染拡大抑止のために責任を果たすべきです。

GoToめぐり大混乱

 安倍政権の対策の無策ぶりを示したのが、観光需要喚起のための「Go Toトラベル」事業をめぐる迷走です。同事業はもともと8月実施予定でしたが、今月初め、赤羽一嘉国土交通相が22日からの前倒し実施を突然発表しました。

 東京では新規感染者が連日100人を超える状況が続いていたのに、専門家をはじめ地方の関係者の意見をまともに聞かないままの発表に、地方自治体などから批判が一気に噴き出しました。延期・中止を求める意見が相次ぎ、国交省は16日の専門家会議分科会に「東京の発着を除外」する案を示してようやく了承を得て、22日からの実施を決めました。これには東京居住者や観光業者などから不公平感を訴える声が絶えません。

 もともと「Go Toトラベル」を含む「Go Toキャンペーン」事業は、1・7兆円を超える事業費や約3000億円の委託費などが大問題になりました。コロナで打撃を受けている観光・宿泊業者には直接支援こそ実効性があり、急がれるとの指摘もありました。国民の疑念を置き去りにして、22日実施を強引に決めた安倍政権のやり方は、あまりに乱暴です。

 東京の感染拡大に対する安倍政権や小池百合子都政の対策も不安だらけです。新規感染者数は7月初めから100人超の事態になっていたのに、対応は後手です。都は15日に警戒度を最高レベルに引き上げたものの、実効性のある本格的対策に踏み込みません。

 東京都医師会の尾崎治夫会長は「地域を限定し、しっかりと補償を伴う休業要請をして一定期間休んでもらう。その間にPCR検査を徹底的にやっていくことが必要だ」と述べ、国の責任で行うことの重要性を説きました。徹底した補償とセットでの休業要請を、業種と地域を限定して行うことが急務です。国が財政的にしっかり支えなければ、業者も安心して協力できません。それは今年春の感染拡大時の痛切な教訓のはずです。

首相は国民に説明せよ

 PCR検査の抜本的強化や感染者の入院先の確保も加速が必要です。保健所も、感染者が増加している都内の地域では人的体制がひっ迫しつつあると警告されています。厚生労働省の専門家の助言組織も「人的・物的な支援は急務」と提言(14日)しています。手をこまねいている時でありません。

 安倍首相は、ごく短時間の取材には応じるものの、記者会見は先月18日を最後に開いていません。国会審議にも出席しません。コロナ感染が重大局面に入った時に、なぜ国民に直接語ろうとしないのか。この姿勢のままでは国民の信頼や協力は得られません。


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