2020年7月9日(木)
主張
河井夫妻の起訴
巨額資金提供の解明は不可欠
2019年7月の参院選広島選挙区での大規模買収事件で、地方議員や首長ら100人に約2900万円もの現金を渡したとして河井克行前法相・衆院議員と妻の案里参院議員(ともに自民党を離党)が、東京地検に起訴されました。重大なのは巨額の買収資金の出所です。参院選に際し自民党本部から河井夫妻には1億5000万円もの資金が提供されており、それが買収資金に充てられた疑惑が濃厚です。案里氏を参院選で公認し、資金を提供し、参院選後に克行氏を法相に起用した安倍晋三首相らの責任は免れません。
票をカネで買う重大犯罪
河井夫妻は県議や市議、首長など94人に121回にわたり1人当たり5万~200万円の現金を計約2570万円渡した容疑で逮捕されました。その後の調べで新たに300万円超を配っていた疑いがあるとして、起訴時の買収総額は、2900万円に膨らみました。
河井夫妻は、現金を地方議員らに渡したのは、同年4月の統一地方選での「陣中見舞い」だったなどと言い訳し、案里氏の票の取りまとめを依頼する目的ではなかったと言っているといいます。しかし地方議員などの証言では現金を渡されたのは地方選時だけでなく、参院選が間近に迫った同年6月や参院選中にも例があり、河井夫妻の主張には説得力がありません。
克行氏は案里氏の選挙での「総括主宰者」にあたるとされています。裁判で罰金刑以上の有罪が確定すれば、克行氏も案里氏も失職します。そもそも票をカネで買うのは民主主義を踏みにじる重大な犯罪です。判決を待たず、夫妻は国会議員を即刻辞任すべきです。
民放テレビJNNの世論調査では、河井夫妻は議員を辞職すべきだという回答が90%にも上ります(6日の報道)。逮捕されるまで自民党議員だった河井夫妻に安倍首相(自民党総裁)は、辞職を求めるべきです。
問題の核心は、自民党本部から河井夫妻に送金された1億5000万円もの巨額の資金です。このうち8割の1億2000万円は、税金で賄われる政党助成金です。提供した政党助成金の使い道を国民に説明すべき立場にある自民党本部はその使途を明らかにしません。他の自民党候補の10倍もの資金提供は、総裁でもある安倍首相の知らないところでは実行できないと言われています。買収目的の資金なら、交付した側の安倍首相らも「買収目的交付罪」に問われます。
税金で賄う政党助成金が買収に使われたとすれば言語道断で、自民党本部側の説明にも「納得できない」という答えがさきのJNNの調査で87%を占めます。河井夫妻にとどまらず、政権中枢の責任が問われる事態です。
首相は国民に説明せよ
克行前法相から現金を渡された一部の地方議員は、「安倍さんから」と言われたと明言しています。自民党の2人目の参院選広島選挙区候補として案里氏を擁立、巨額の選挙資金で応援し、自らの地元秘書まで応援に送り込んだ安倍首相の責任はとりわけ重大です。
河井前法相夫妻による巨額買収事件は、安倍政権下での政治腐敗・モラル崩壊を象徴する事件です。河井夫妻の買収事件だけでなく、「森友・加計・桜を見る会」など一連の問題を国会で徹底究明すべきです。