2020年7月8日(水)
主張
障害者差別解消法
実効性のある法律の見直しを
障害者差別解消法が2016年4月に施行されて4年がたち、「施行3年経過後の見直し」(同法付則第7条)の時期を迎えています。同法は、国や地方自治体である行政と事業者が正当な理由なく障害を理由として差別することを禁じるとともに、障害者が求める社会的障壁の除去について合理的配慮の提供を求めています。
障害当事者の委員が多数参加する内閣府の障害者政策委員会は、見直し議論を終了し6月22日に意見書をまとめました。意見書では、差別の定義・概念の明確化、事業者による合理的配慮の提供などの四つの課題を提言しています。
定義と概念を明確化し
差別解消法は障害者への差別を禁止する法でありながら、その要である何が差別にあたるのかという定義がありません。意見書は、差別の定義・概念を明確化することが「社会的な認識を広げ、差別の解消に資する」としました。
一方、「あらゆる差別を禁止している障害者権利条約との関係で、かえって条約よりも差別を狭く定義してしまう」「法律の定義に該当しないものは差別に当たらないと捉えられてしまう」など以前から繰り返されてきた否定的意見も併記されました。しかし、いつまでも定義を避けていては、社会の認識は広がりません。終止符を打つ時です。障害者権利条約に準じた定義や概念を法に明記した上で、現在も策定されている対応要領や対応指針などで個別具体的な差別事例をさらに収集・記載し、国民の理解を促すべきです。
合理的配慮について差別解消法は、国や自治体には提供を義務づけているものの、民間事業者には努力義務にとどまっています。
経済界には、中小企業の負担の重さを理由に、合理的配慮の義務化に根強い反対があります。内閣府の障害者政策委員会でも商工会議所の委員が反対意見を述べました。しかし障害者雇用促進法は合理的配慮を民間企業にも義務づけています。負担軽減のため、民間事業者、自治会、サークルなどを対象に、点字メニューの作成やスロープの購入・工事費用などを助成する自治体もあります。民間事業者任せにせず、国や自治体が合理的配慮の提供のための予算を積極的に確保し、差別をなくす努力をすることが不可欠です。
一部の委員がまとまって、修正を求める意見書を2回出しました。差別してはならない対象に障害者の家族など関係者を含むこと、障害のある女性・子どもが複合的な差別を受けている実態を把握し、きめ細かな支援などを求める内容です。これらとともに、管轄省庁への相談のたらいまわしを防止するためのワンストップ窓口設置の検討が最終的に意見書に反映されました。重要な動きです。
すべての人が生きやすく
障害者団体は、障害当事者団体や法律家、社会福祉専門家らで構成する政府から独立した裁判外での紛争解決の仕組みづくりや、立法府や司法府も解消法の対象とすることなどを要求しています。改正で盛り込まれるよう、議論をさらに進めることが必要です。
障害者への差別をなくすことは、すべての人が生きやすい社会をつくることです。障害者の声がいきる、実効性のある差別解消法改正の実現に向けて、力を合わせていきましょう。