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2020年7月4日(土)

主張

敵基地攻撃能力

“火事場泥棒”もはなはだしい

 自民党が「ミサイル防衛に関する検討チーム」を立ち上げ、敵のミサイル発射拠点などを直接たたく「敵基地攻撃能力」の保有に関する議論を始めました。政府が、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備断念を受け、安全保障戦略を見直し、9月中に方向性をまとめようとしていることに呼応した動きです。陸上イージスの断念に乗じ、憲法をじゅうりんする敵基地攻撃能力の保有に踏み出すことは許されません。

前防衛相も「論理飛躍」

 安倍晋三首相は6月18日の記者会見で、陸上イージスの断念に触れた上で、弾道ミサイルの脅威に対し「抑止力、対処力を強化するために何をすべきか」と述べ、「安全保障戦略のありようについて、この夏、(政府の)国家安全保障会議で徹底的に議論し、新しい方向性をしっかりと打ち出し、速やかに実行に移していきたい」と表明しました。これまでの自民党国防部会などによる敵基地攻撃能力の保有を求めた提言についても「受け止めていかなければいけない」「政府においても新たな議論をしていきたい」と述べました。

 こうした発言を受け、自民党内では、敵基地攻撃能力の保有に関する議論に拍車がかかりました。同党が6月30日に開いた「ミサイル防衛に関する検討チーム」の初会合では、敵基地攻撃能力の保有に積極的とされる小野寺五典・元防衛相が座長に就任しました。出席した中谷元・元防衛相も会合後、記者団に保有の必要性を強調したと報じられています。

 一方で、会合では「イージス・アショアの配備が難しいからといって、一足飛びに敵基地攻撃能力の保有を考えるのは論理の飛躍がある」(岩屋毅・前防衛相)との異論もあったといいます。

 河野太郎防衛相は6月26日の記者会見で、陸上イージスの代替手段に関し、「そもそもイージス・アショアの配備は計画が進んだとしてもしばらく時間がかかるわけで、その間、イージス艦とかPAC3で対応する体制が取れている」「ミサイル防衛そのものについて心配いただく必要はない」と述べています。河野氏の主張からしても、敵基地攻撃能力の保有を求める議論が「論理の飛躍」であるのは自明です。“火事場泥棒”もはなはだしいというほかありません。

 政府は、敵基地攻撃について日本へのミサイル攻撃を防ぐため「他に手段がない」場合、「法理的」には「可能」としてきました。しかし「平生から他国を攻撃する、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは憲法の趣旨ではない」との見解も示してきました。敵基地攻撃能力の保有が憲法に反するのは明らかです。

きっぱりと断念すべきだ

 政府はすでに、敵基地攻撃を可能にする巡航ミサイルやF35ステルス戦闘機の取得、「いずも」型護衛艦の空母化などをなし崩し的に進めています。今後いっそう本格的な敵基地攻撃能力の保有に乗り出せば、軍事費の膨張は際限がありません。専門家は、地下や移動発射台にある敵のミサイルすべての位置を把握し破壊するのは不可能だとし、核の報復攻撃の危険も指摘しています。

 敵基地攻撃能力の保有は、北東アジアの軍事緊張も激化させます。きっぱりと断念すべきです。


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