2020年6月30日(火)
主張
河井夫妻買収事件
資金提供した政権の責任重大
河井克行前法相・案里参院議員夫妻(ともに自民党を離党)による昨年の参院選広島選挙区での巨額の買収事件は、まさに底なしの様相です。広島県内の複数の地方議員や首長が、河井氏側から現金を受け取った事実を認めており、広がりは深刻です。議員の中からは現金授受の際、河井前法相から「安倍さんから」と言われたという証言も飛び出しました。自民党本部から河井夫妻に送金された1億5000万円もの巨額資金提供の経緯をはじめ、安倍晋三首相ら政権中枢の関与を解明することがいよいよ必要です。
「安倍さんから」と現金
河井夫妻の買収事件は昨年7月の参院選で案里氏を当選させるため、広島の県議会議員や首長、地方議員、後援会関係者など94人に総額2570万円もの現金を手渡し、票の取りまとめを依頼したというものです。
公職選挙法は221条で、「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益」を「供与」する行為について「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と、厳しく禁じています。選挙にあたっての買収は、文字通り“票をカネで買う”もので、民主主義を破壊する言語道断な犯罪です。
金銭を提供された94人のうち、首長や地方議員などの地方政治家が40人で、54人は後援会や陣営の関係者でした。現金を受け取った首長のうち安芸太田町長は辞職、三原市長は辞職を表明しました。
重大なのは、克行氏から現金30万円を渡された案里氏の後援会長の府中町議が、「安倍さんから」と言われて現金が渡されたと証言していることです。同氏は議員を辞職しました。
買収に使われた資金は、自民党本部から河井夫妻の自民党支部に振り込まれた1億5000万円である可能性が指摘されています。公選法は、買収をさせる目的で金銭などを交付した場合は、交付した側も罰せられると定めています(「買収目的交付罪」)。
河井陣営に破格の1億5000万円が出されたのは、自民党総裁である安倍首相の指示なくしてはありえないといわれます。参院選前、党本部から河井陣営に資金が振り込まれるのと相前後して、首相と克行氏が面会を繰り返していたことも判明し、疑惑を深めています。こうした事実から、首相の「買収目的交付罪」の疑いが浮上してきています。
案里氏の参院選出馬は、安倍首相や菅義偉官房長官らの強いあと押しを受けたものです。選挙戦では、安倍首相や菅氏だけでなく、首相の地元・山口県から秘書らが、応援に入りました。
首相のテコ入れ解明せよ
買収に使われた資金の約7割が自民党系の地方政治家に配られたのは、もう一人の自民党候補だったベテラン政治家の票を崩すためだったともいわれます。落選したベテラン政治家は安倍首相に批判的な人物でした。首相の“政敵つぶし”の声もあります。
自民党本部から振り込まれた資金のうち1億2000万円は税金で賄う政党助成金だったことも明らかになっています。河井夫妻の買収事件を徹底究明し、安倍首相ら政権中枢の責任を明らかにすることが不可欠です。