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2020年6月29日(月)

育鵬社・自由社・日本教科書

侵略の正当化「採択」阻止を

子どもと教科書全国ネット21事務局長 鈴木敏夫さんに聞く

 来年から使われる中学校教科書を決める採択に向けて、全国各地で教科書展示会が行われています。今回の教科書採択では歴史の事実をゆがめて日本の侵略戦争を正当化する育鵬社の歴史、公民の教科書、自由社の公民の教科書、子どもの心を脅かす「日本教科書」の道徳教科書が問題になっています。これらの教科書の危険性と、採択を許さない取り組みについて子どもと教科書全国ネット21の鈴木敏夫事務局長に聞きました。(井上拓大)


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 育鵬社の歴史教科書は、日露戦争での日本の勝利について「同じ有色民族が、世界最大の陸軍国・ロシアを打ち破ったという事実は、列強の圧迫や植民地支配の苦しみにあえいでいたアジア・アフリカの民族に希望をあたえました」などと記載しています。他の教科書は、日露戦争後の日本による韓国併合に、ネールや孫文が失望し日本を批判したことが書かれていますが、育鵬社はこうしたことに触れていません。アジア太平洋戦争を、大東亜共栄圏をつくる「自存自衛の戦争」だとし、「大東亜戦争」を見出しに併記しています。このまま読めば、アジア太平洋戦争はアジアを解放する自衛戦争と誤解させる内容になっています。

憲法改悪を狙う

 同社の公民教科書は、日本国憲法改悪を狙う記載が強化されています。憲法学習のまとめページに具体的な「改正案」の例を載せ、生徒たちに議論させるアクティブラーニングコーナーが新たに設けられ、一層改憲への誘導を強めています。「改正案」の例のなかには、憲法第9条について「『戦力は保持しない』と書かれているため、自衛隊は違憲かもしれないと言われている」と「課題」を設定し、「改正案」として「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込み、自衛隊の存在を憲法上にしっかり位置づける」と、安倍首相の主張と同じ記述をしているものもあります。それに沿って生徒に議論させようというのです。

 日本教科書の道徳の教科書にも、日本の植民地支配を美化する内容があります。台湾でのダム建設に尽くした日本人もいたとする「大地―八田與一の夢」は、ダム等の巨大な水利施設が日本へ送る砂糖やコメなどを生産する田畑をつくるためのものだったことには触れていません。

数値で自己評価

 また道徳の教科書には、「国を愛し、伝統や文化を受け継ぎ、国を発展させようとする心(愛国心)」など、22の徳目を達成度1~4までの数値で自己評価させています。修正予定としていますが、これは、生徒に価値観を押し付け、内心の自由に踏み込むものです。

 全国各地で、日本教科書や育鵬社・自由社の教科書を採択させないための運動が展開されています。横浜市では、教職員の意見が反映される教科書採択制度と、地域性や子どもたちの実情に即したきめ細かい教育の実現のために、教科書採択地区の小規模化を求める県民署名が行われています。育鵬社の歴史教科書が使われている市の教職員からは「歴史学の最新の成果が反映されず、間違いが多くて困る」との意見が出されました。「この教科書では受験の時にこまる」との声が上がっています。

 大切なのは、教科書採択に対するたくさんの市民や教職員の意見を聞いて、取り入れることです。なるべく多くの人々が展示会に参加できるようにし、採択に関する会議や審議の透明性を確保することが不可欠です。


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