2020年6月28日(日)
南シナ海問題 国際法順守を強調
ASEAN首脳会議
【ハノイ=井上歩】東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国ベトナムは27日、テレビ会議形式で26日に開かれた第36回首脳会議の議長声明を発表しました。南シナ海で東南アジア諸国の排他的経済水域(EEZ)内の権利を侵害する中国の行動が続いていることを受け、南シナ海問題で「国際法を擁護する重要性」を強調する文言を盛り込みました。
|
議長声明には、1982年採択の国連海洋法条約について「海域に対する主権的権利、管轄権と合法的な権益を決定する基礎」であり、「海洋での全活動の法的枠組み」だと確認する文言が盛り込まれました。ベトナムのグエン・スアン・フック首相は26日夜の記者会見で「ASEANは(今回)、地域の問題解決で国際法の順守を強調した」と述べました。
国連海洋法条約は沿岸国が200カイリ以内のEEZで資源開発する権利などを規定。2016年の常設仲裁裁判所判決は、南シナ海ほぼ全域に対する中国の権利主張を退け、訴えを起こしたフィリピンのEEZの存在や権利を認めています。
首脳会議が今回採択した「首脳ビジョン声明」は、仲裁判決後に10カ国が合意した「法的・外交的プロセスの全面尊重を含む紛争の平和的解決」の原則を確認。中国と交渉中の南シナ海行動規範(COC)についても海洋法条約と国際法に合致した実効的な規範を目指すとしています。
各国の発表や報道によると、フィリピンのドゥテルテ大統領は首脳会議で、「南シナ海で憂慮すべき事件」が起きており、「緊張を激化させる行動をとらず、国際法と国連海洋法条約の義務に従うことを関係国に求める」と発言しました。
ドゥテルテ氏は、大国の対立激化などの情勢を踏まえて、ASEANが「ルールに基づく国際秩序」を強く支持すべきだとも強調。インドネシアのジョコ大統領も、大国による「ルールに基づく秩序に反する行動が増えている」と指摘しました。
議長声明は、南シナ海の情勢に関して「信頼を損ない、緊張を高める行動や深刻な事案に懸念が表明された」と記し、自制や非軍事化を呼びかける内容を盛り込みました。
中国が南シナ海に防空識別圏の設定を計画していると伝えられる中、海の航行とともに上空飛行の自由と安全の重要性も確認しました。