2020年6月23日(火)
きょうの潮流
「あんたもわたしも/おまえもおれも/艦砲の喰(く)い残し」。沖縄で歌い継がれる「艦砲ぬ喰ぇー残さー」。鉄の暴風といわれた米軍の艦砲射撃を生き延びた島民の苦難を込めた反戦歌です▼きょう「慰霊の日」に摩文仁(まぶに)の平和祈念公園で催される追悼式。沖縄戦の研究者で作家の大城将保さんは以前、式典の最中に艦砲弾の破片をひろったことがあります。それ以来、この島唄が頭から離れなくなったといいます▼現在も、この小さな島に横たわる巨大な米軍基地。沖縄の戦後は、あの悲惨な戦争から地続きの時間として、今に至っています。基地あるがゆえの耐えがたい苦痛。その根源となっているのが日米安保条約です▼現行の条約が発効してから60年。世界でも類のない基地負担は変わっていません。日本の法は及ばず、陸でも空でも海でも我が物顔。そのうえ、国民生活そっちのけで莫大(ばくだい)な思いやり予算をつぎ込む。まるで植民地のような戦後75年の姿です▼命を削った前沖縄知事の翁長雄志さんは、いっこうに動かない現状を「国の政治の堕落」だと。いつまでも米国につき従い、みずから国民の安全を切り開けない政治。それが主権国家といえるのか▼大城さんは新著『「沖縄人スパイ説」を砕く』のなかで沖縄の心とは何かを問い直しています。「人間の尊厳を何よりも重く見て、戦争につながる一切の行為を否定し、平和を求め、人間性の発露である文化をこよなく愛する」。平和の礎(いしじ)と結ばれるそれは、日本の心でもあるでしょう。