2020年6月20日(土)
河井案里容疑者 昨年の参院選
上限超す出費 複数記載
車上運動員以外も
ジャーナリストが文書入手
昨年7月の参院議員選挙をめぐり、地元県議らに現金を渡して票の取りまとめを依頼したとして、夫の河井克行容疑者とともに検察当局に逮捕された参院議員の案里容疑者。選挙運動では、秘書が有罪判決を受けた車上運動員への違法報酬の他にも、法定上限額を超える複数の出費を広島県選挙管理委員会に届けていたことを、大阪府在住のジャーナリスト、鈴木祐太さんが指摘しています。(安川崇)
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両容疑者側には選挙前、自民党本部から計1億5000万円が提供されました。異常な選挙運動の半面、ずさんな帳簿処理の一端が現れたと言えそうです。
鈴木氏は昨年10月と今年3月に県選管から、案里氏の選挙運動費用収支報告書を情報公開で入手しました。
昨年入手の報告書には、同7月4日付でポスター掲示に従事した人への報酬が「1万2000円」「1万1000円」などと書かれています。上限額は1人1日1万円で、超過しています。
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欄外には、県選管によるとみられる「1日の上限額10000円を超えていませんか。要確認」という書き込みがあります。
弁当代にも上限超の額の支出を届けていました。宿泊費の項にも、欄外に「宿泊料の上限は1夜12000円ですが超過していませんか(要確認)」という書き込みがありました。
今年3月に改めて開示請求した報告書ではいずれも額が下がり、上限超の支出はなくなっていました。修正印などはなく、後で請求した報告書を見るだけでは変化したことがわかりません。
県選管は「上限超の記述などがあったので、事務的ミスがないか候補者側に問い合わせた。公表前なら修正している」としています。
鈴木さんは「修正した痕跡が残らないと、有権者は支出をチェックできない」と問題提起。政治資金に詳しい上脇博之・神戸学院大学教授は「上限額を超えて支出したら少額でも公選法違反。後で帳簿上だけつじつま合わせをしたとしたら虚偽記載で、やはり公選法違反に問われる可能性がある」と指摘します。
なお、案里容疑者の選挙運動費用収支報告は現在も一般に公開されていません。県選管は「書類上の不備が残っているため」としています。
案里容疑者の事務所には連絡がつながりませんでした。
報告書によると、参院選での案里氏の収入は、自身が支部長を務める自民党広島県参院選挙区第七支部が寄付した2300万円。支出合計は公費負担分を含めて2317万円あまりでした。党本部からの1億5000万円との差は大きく、単純計算で約1億2000万円の使途が不明とも言えます。