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2020年6月11日(木)

論戦ハイライト

コロナ危機 雇用・教育・検査 首相をただす 第2波に備えた対策を

衆院予算委 志位委員長の質問

 10日の衆院予算委員会で日本共産党の志位和夫委員長は、新型コロナウイルスによる雇用危機、検査体制と保健所体制、子どもたちの学び、心のケアの問題について、感染拡大の「第2波」に備える立場から政府の姿勢をただすとともに打開策を提起しました。


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(写真)質問する志位和夫委員長=10日、衆院予算委

雇用危機打開

志位「雇調金の大転換を」

首相「ドイツの制度も参考に」

 雇用危機をどう打開するか。志位氏は、4月で約600万人(労働力調査)と空前の規模になった休業者を失業者にしてはならないと強調。新型コロナの影響で業績が悪化した企業を支援する雇用調整助成金の相談件数がすでに44万件を超えているのに、申請書提出件数は約13万件、支給決定件数はわずか6万9898件(8日時点)にとどまっていることを示しました(パネル1)。

 約600万人の休業者に雇調金の対象となる時短休業者を加えると1000万人を超えているのに、この支給決定数では実際に手当てされている労働者は推計「133万人」(加藤勝信厚生労働相)にとどまっています。

 煩雑な手続きの「簡素化に努めている」という安倍晋三首相に、志位氏は、それでもなお煩雑な添付書類があり、労働局にも電話がつながらないなど事業者が申請書を提出するには多くのハードルがあると指摘。「休業者への手当てが遅れれば、大量解雇、大量倒産は避けられない。相談件数と支給件数との間にあるギャップを一刻も早く埋める必要がある。『まず給付し審査は後で』という仕組みへの大転換が必要だ」と強調しました。

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(パネル1)出典:厚生労働省ホームページ及び同省職業安定局からの聞き取りにもとづき志位和夫事務所が作成

 そこで志位氏が取り上げたのが、ドイツの「クルツアルバイト」(時短労働給付金制度)という制度です。やむをえない事情で企業が従業員の労働時間を短縮する場合、賃金減少分の6割を国が補填(ほてん)します。4月下旬までの2カ月弱の期間に1010万人もの労働者の時短(休業)がこの給付制度でカバーされました。

 なぜ驚くほどの迅速処理が実現できたのか。志位氏は、大幅な体制強化とともに申請と審査の進め方が日本とは全く違うと指摘しました。

 同制度では、新型コロナ対応で、申請書類は「従業員に払う休業手当総額」「従業員ごとのリスト」のわずか2種類となっており、添付書類はいっさい必要ありません。また、事前審査もなく、「給付が先、審査は事後」で、事後チェックも抜き打ち・抽出審査のみです。

 志位氏は、4月29日の質問で自身が求めた、雇調金の上限額のイギリス並み(月33万円)への引き上げを首相が認めたことについては評価したいと述べた上で、「ただ、事前審査の仕組みが変わっていないためにスピードが間に合わない」と現在の問題点を指摘。首相が「思い切って発想を変える」「性善説に立って対応していく」と表明してきたことにもふれ、次のように提案しました。

 志位 限度額はイギリス並みに引き上げたのだから、支給方式はドイツ式を取り入れる。良いものは外国に学ぶ。どうか。

 首相 ドイツの制度についても参考にさせていただきたい。

子ども 教育

志位「心のケアに取り組む教育が必要だ」

首相「寄り添うこと求められる」

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(パネル2)出典:国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート」中間報告(2020年5月12日)から志位和夫事務所が作成

 6月1日から全国の学校が再開されましたが、長期休校で子どもの学習が遅れるとともに、子どもは不安やストレスを抱えています。国立成育医療研究センターのアンケート結果では、多くの子どもが「集中できない」「イライラする」と回答するなど、心への影響の深刻さが表れています。(パネル2)

 志位氏は、教員が「子どもの心のケアをすることが学びを進める前提」と異口同音に語っていることを紹介し、首相に問いました。

 志位 一人ひとりの子どもに丁寧に寄り添い、心のケアに取り組む手厚い教育が必要だ。

 首相 心に寄り添いながらサポートすることが求められている。

 志位氏は、学習の遅れを取り戻そうと7時間授業など詰め込み教育をすれば子どもに新たなストレスを与えると指摘し、「子どもたちをゆったり受け止めながら、学びとともに遊びや休息を保障する柔軟な教育が大切だ」と提起。安倍首相は「最終学年以外の子どもは2、3年間で無理なく学習を取り戻せるよう特例を設ける」と語りました。

 首相も手厚く柔軟な教育の必要性について認めました。では、どうすればそうした教育は可能になるのでしょうか。

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(パネル3)出典:「提言9月入学よりも、いま本当に必要な取り組みを―より質の高い教育を目指す改革へ」日本教育学会(2020年5月22日)から志位和夫事務所が作成

 志位氏は、学びを保障し、ストレスや悩みに応える学校づくりのため教員10万人増とスタッフの大幅増員が必要とする、日本教育学会の提言(5月22日)を紹介しました。(パネル3)

 小中高の学校教員数は全国で90万人。10万人増とは約1割増やそうというものです。志位氏は、同学会が定年退職した教員のうち10万人など潜在的に教職につける人がいることなどを具体的に示していることもあげ、首相に決断を迫りました。

 志位 政府が「セーブ・ザ・チルドレン」(子どもを救え)と呼びかけ、きちんとした待遇を示せば10万人の教員を増やせる。

 首相 第2次補正予算で教員や学習指導員、スタッフを計8万5千人追加で配置する。

 志位氏は、政府の第2次補正予算案では小・中学校の教員の加配は3100人で、10校あたり1人にすぎないことを指摘。教員増を中心にすえて子どもの学びを保障するように求めました。

志位「少人数学級の加速を」

首相「検討していきたい」

 さらに志位氏は「教員の大幅増は学校での感染拡大を防止するうえでも必要不可欠です」と強調しました。

 政府の専門家会議は「新しい生活様式」として、人との間隔を「できるだけ2メートル(最低1メートル)空ける」ことを基本にしています。志位氏は、文部科学省が発表した衛生管理マニュアルにある教室内の席配置の図を示し、「2メートルの間隔を取るには(1クラス)20人程度に抑えることが必要になる。40人学級では1メートル空けることも難しい」と指摘。萩生田光一文科相は事実を認める一方、「感染レベルにあわせ、学校運営をしていただきたい」などと述べました。

 志位氏は、現場では約20人の分散授業の取り組みなどが途中で終わり、最後まで緊急事態宣言が続いた8都道府県でも大半が15日から40人学級に戻る予定だと指摘。「20人授業を続けるには現在の教員数では少なすぎます」と語り、「身体的距離の確保」を「新しい生活様式」として取り組むのなら「子どもが学校で最も長い時間を過ごす教室でも保障すべきです」と求めました。

 そのうえで、日本教育学会が提唱する教員10万人増を実現すれば、全国的に20人程度の授業が可能になると強調。15年に安倍首相が少人数学級を進めるため「鋭意努力していきたい」と答弁したことに触れ、教員増の実現を迫りました。

 志位 今回の事態を踏まえ、少人数学級の取り組みを加速させると約束してください。

 首相 コロナ後を見据えどう対応していくか、検討していきたい。

 志位氏は、コロナ後の社会を見据え、保健所や医療を削り、教育のゆとりをなくしてきた政治を反省し、転換するよう強く要求。教員の大幅増は「困難を乗り越えた後、子どもたちに少人数学級をプレゼントすることになる」と述べ、「ぜひプレゼントしようじゃないか」と呼びかけました。

検査と保健所

志位「PCR検査、保健所体制の抜本強化を」

厚労相「感染の可能性があれば公費で検査」

 志位氏は「『第2波』の兆候を的確につかみ、感染拡大を早期に封じ込めるため、検査体制、保健所体制の抜本的な強化が必要だ」と提起しました。

 PCR検査の体制をめぐっては、「積極的感染拡大防止戦略への転換」を訴える岩手、愛知、広島など18道県の知事の「緊急提言」を紹介。「先手を打って感染拡大を防止する」として、すべての有症者・接触者への速やかな検査や、医療・介護・障害福祉事業関係者への症状の有無を問わない優先的な検査を掲げ、検査能力を1日10万件、20万件まで引き上げるよう訴えているとし、「積極的・合理的な提案だ。受動的検査から積極的検査への転換を政府として宣言し、断固実行に移すべきだ」と迫りました。

 安倍晋三首相は、濃厚接触者については「症状の有無にかかわらず検査」することにしたと述べたものの、「戦略的転換」については答えませんでした。

 志位氏は「濃厚接触者は無症状でも検査する方針に変えたのは一歩前進だ」としつつ、「現場の医師まかせでなく、国の方針として積極的な検査戦略を宣言すべきだ」と強く求めました。

 志位氏は、院内・施設内感染を防止するため、医療・介護・障害福祉の現場での検査拡充が急務だと強調し、院内感染防止に成功した病院の取り組みを分析した黒木登志夫前岐阜大学学長・東京大学名誉教授が、成功の要因にコロナ患者と接触した可能性のある人、職員、入院患者へのPCR検査の徹底を挙げ、「厚労省が(徹底のための)わずかの予算を渋っていることが、病院クラスターを作り、医療崩壊を招く」と指摘していることを紹介。「この批判をどう受け止めるか。少なくとも地域で感染拡大の兆しがあれば、医療・介護・福祉施設関係者には、国の責任で無症状者も含めて検査する方針をとるべきだ」と迫りました。

 加藤勝信厚労相は「感染の可能性・端緒があれば積極的疫学調査(検査)を行い、費用は国費か地方公共団体が負担する」と答えました。

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(パネル4)出典:厚生労働省健康局健康課地域保健室調べから志位和夫事務所が作成

 志位氏は、保健所の体制について「抜本的強化の必要性が、コロナ危機を通じて痛いほど実感された。政府の専門家会議も体制強化を訴えている」と指摘。「全国の保健所数は1990年の850カ所から19年には472カ所に激減した」と追及しました。(パネル4)

 志位 保健所職員は不眠不休で奮闘したが、パンク状態に陥った。保健所数の削減が原因だという認識はあるか。

 首相 保健所の減少傾向は、市町村の保健センターとの役割分担の明確化や集約化が進んだ結果だ。

 志位 反省がない。保健センターでは感染症対策はできない。職員数も3万5000人から2万8000人に減っている。

 志位氏は、2010年の新型インフルエンザ対策に関する政府の報告書でも、保健所や地方衛生研究所の組織・人員体制の大幅強化が提言されていたのに、安倍政権は警告を無視して今日の事態を招いたと批判。「第2次補正予算案には保健所の恒常的な体制強化のための予算は1円もない」と述べ、一刻も早い体制強化を強く求めました。


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