2020年6月5日(金)
主張
コロナ直撃の雇用
働く人を守りぬく対策を急げ
新型コロナウイルスの感染拡大が雇用を直撃しています。政府の雇用統計はどれも急激に悪化しています。働く人たちが職を失い路頭に迷うことがないよう、安倍晋三政権に対策を迫るたたかいがいよいよ重要になっています。
どの統計も急激に悪化
厚生労働省の調査だけでも、コロナの影響による5月末までの解雇や「雇い止め」は1万6000人を超えました。業種別では、宿泊業や観光バス・タクシー運転手などの道路旅客運送業が多くなっています。緊急事態宣言が出された後の4月の雇用統計によると、完全失業率は2カ月連続で悪化、完全失業者数は178万人でした。求職者に対する求人の割合を示す4月の有効求人倍率も前月に比べ急落しています。
今後の派遣労働者の「雇い止め」の増加も懸念されます。年度初めの4月に働きだした派遣労働者の契約期間は2~3カ月単位が多いため、期限切れと同時に企業が派遣契約を更新しないケースも少なくないとみられます。
解雇や「雇い止め」には至らなくても、4月の休業者数は前年同月比で420万人も増え、過去最多の597万人に上りました。労働力人口の約1割が仕事を休んだというかつてない事態です。休業者数は2008年のリーマン・ショック直後のピークの約4倍です。雇用調整助成金の支給などの支援の手がしっかり届かなければ、休業者が失業者になりかねません。
リーマン・ショックの際には大企業の大規模なリストラや労働者への派遣契約の打ち切りが横行し、「派遣切り」として大問題になりました。それに対する労働者の粘り強いたたかいは、本紙の連載小説「時の行路」で克明に描かれ、映画化もされました。
コロナ禍の中での雇用情勢は、この時より厳しくなるとの指摘が相次いでいます。解雇や「派遣切り」に対して各地で労働者がたたかいに立ち上がっています。東京都内のタクシー会社では退職の強要を撤回させ、営業停止期間中の休業補償や見舞金の支給などを認めさせました。宮城県内の自動車部品メーカーでは、「雇い止め」を会社都合によると認めさせ、休業補償も出させました。
コロナを理由にした不当な解雇や「雇い止め」をはね返す取り組みが緊急に必要です。
労働者が働くことで生活の糧を得るのは憲法でも保障された国民の権利です。解雇権の乱用が許されないことは、これまでの労働者のたたかいや最高裁判所の判例などでも確立された原則です。「整理解雇の4要件」((1)人員整理の必要性(2)解雇回避義務の履行(3)被解雇者選定の合理性(4)手続きの妥当性)を満たさなければ、解雇は認められません。政府は解雇や「雇い止め」を厳しく規制する対策をとるべきです。
企業に責任を果たさせる
財務省が公表した今年1~3月期の法人企業統計調査で企業の経常利益は前年同期比で減少したとはいえ、資本金10億円以上の大企業の内部留保は487・6兆円もあります。ため込んだお金を労働者の雇用や下請け中小企業を守るために使うべきです。
コロナで苦境に立つ国民の暮らしを守るため、大企業に責任を果たさせることが、今こそ求められます。