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2020年6月1日(月)

宮城・ホンダ系企業 「コロナ」口実に派遣切り

1カ月単位で解約

共産党・労組が支援

 新型コロナウイルス禍のもとで、「派遣切り」が広がっています。突然、解雇・雇い止めを通告され、社員寮も追い出される労働者が相次いでおり、2008年の「派遣切り」をほうふつとさせる動きです。(田代正則)


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(写真)ケーヒンのワタリ工場=宮城県亘理町

 「派遣労働者は何も知らないと、いいようにされてしまう」―宮城県角田市の男性(52)は、「派遣切り」で社員寮も退去させられました。一緒に住んでいた息子(26)も就職した飲食店が緊急事態宣言で休業に。親子で追い詰められました。

 男性が派遣労働者になったのは、東日本大震災で家と仕事を失ったことがきっかけでした。

 2018年夏からはホンダが主要株主(41%)の部品メーカー「ケーヒン」のワタリ工場(宮城県亘理町)に、派遣会社「綜合キャリアオプション」から派遣。時給1200円で、部品加工や検査に従事していました。

 コロナ感染拡大の3月、契約期間が2カ月からわずか1カ月に短縮。3月末に突然、派遣会社から「4月いっぱいでケーヒンはおしまいです」と言われ、雇い止め通知書まで渡されました。社員寮も5月8日には退去するよう迫られました。

 派遣会社は次の派遣先を紹介しましたが、遠方の職場だったため男性が断ると、会社は「自己都合退職扱い」にしようとしました。

 男性は東日本大震災の際、仮設住宅で日本共産党が相談活動をしていたことを思い出し相談。吉田剛仙南地区常任委員と八島定雄角田市議が、市営住宅入居の手続きを支援し、半年ほど入居できることになりました。

 派遣会社に対しては宮城県労連の支援で交渉。会社都合の雇い止めと認めさせ、出さないとしていた休業補償も出させました。

 男性は、「一緒に働いていた同僚7、8人はみんな『派遣切り』になり、次の仕事が見つかったのは1人だけだった」と話します。

 「親子で路頭に迷いそうだったので本当に助かりました。黙っていれば自己責任にされ『派遣切り』される。相談してよかった」

「自己都合」で退職に

問われる首相答弁「雇用は安定」

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(写真)「派遣切り」にあった男性(左)から話を聞く吉田剛党仙南地区常任委員=宮城県角田市

 派遣法では、「雇用安定措置」として、派遣会社は、同じ職場に3年派遣されている労働者について派遣先に直接雇用を依頼したり新たな派遣先の紹介を義務付けています。

 厚労省は3月末、派遣業団体を通じて各社に雇用維持や社員寮の入居延長を要請しましたが、守られていないのが実態です。

 今回のケーヒンでも工場内で派遣労働者の仕事を変え、3年の派遣期間制限をリセットし、直接雇用せずにいつでも「派遣切り」可能な状態で働かせていました。新たな派遣先の紹介も、職場が遠く賃下げになるなど受け入れられない派遣先を紹介して、自己都合退職に追い込まれるケースが横行しています。

 ケーヒンの広報は、派遣を1カ月単位にして解約した理由、解約した人数などについて「答える必要はない。生産状況なども開示していない」と答えました。しかし、綜合キャリアオプションの広報は「コロナで状況の変動をみたいと、1カ月単位の派遣にする派遣先はある」と答えました。

 ケーヒンの19年3月期「有価証券報告書」によると、内部留保の中心となる連結利益剰余金は1721億円。派遣契約を解除せざるを得ない状況なのか、雇用安定措置にどう対応したのか、説明する社会的責任があります。

 厚生労働省によると派遣労働の解雇等見込み労働者は22日時点で710人。これに「自己都合」退職は含まれていません。労働力調査では3月の派遣労働者数が前年同月比で2万人減少しています。

 日本共産党の宮本徹衆院議員は11日の国会質問で、2015年の派遣法改定のさい安倍首相が「派遣で働く方の雇用の安定は現行より確実に強化される」と強弁した責任を追及。コロナを口実にした「派遣切り」をやめさせるよう求めました。


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(写真)村田浩治弁護士

直接雇用必要 派遣法改正を

 非正規労働者の権利実現全国会議の村田浩治弁護士の話 いま起こっているコロナを口実にした「派遣切り」は、2015年派遣法改定時に安倍首相が雇用を安定させる改正だとしていた建前がうそだったと教えてくれたものです。

 派遣労働は直接雇用の例外で本来、3年で原則に戻し派遣先に直接雇用・正社員にしていくべきものです。事業所内の部署異動で個人単位の期間制限をリセットする手法は、その組織単位の実態が変わらなければ違法になり、直接雇用申し込みみなし規定の対象となる場合があります。

 コロナを口実に、契約期間を1カ月更新などに短縮することは、望ましくありませんが、派遣法に規制がありません。嫌だと思っても、仕事を失う派遣労働者から拒否することは難しいのが現実です。

 08年のリーマン・ショックのときに「派遣切り」を生んだ教訓から、12年の派遣法改正を実現しました。しかし、15年施行の1日前に安倍政権によって再び改悪されて延長が可能となったため今回も防げなかった。もう一度派遣法を抜本的に改める動きを起こさなくてはなりません。

 「派遣切り」によって生活が苦しい派遣労働者が声をあげることは大変ですが、労働組合に加入するなどして、声をあげてください。私たちも支援します。


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