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2020年5月31日(日)

手話通訳 マスク「口形の言葉」見えず

聴覚障害者が不安

 新型コロナウイルスの感染拡大にともない、多くの人がマスクを着用しています。そんな中、聴覚障害のある人たちに、「マスクで口元の動きが分からない。そもそも話されているのかも分からない」など、不安が広がっています。(遠藤寿人)


写真

(写真)手話では、手の形が同じでも、口や表情の違いで、別の単語になるものがあります。

 「口の形が分からないのでマスクを外してほしい」―。病院の診察室で聴覚障害者が、手話通訳者に求めます。診察室は患者と通訳と医師、3人が密集。通訳者は「感染したくないが、なんとか伝わるように」とマスクをずらすと、この通訳者は「マスクを外さないでください」と病院側から強く注意を受けるといいます。「手話は『表情』も重要で、意味が変わってきます。表情は文法の一つ。顔が半分見えないのに手話で理解するのは大きな障壁です」と話します。

 聴覚障害がある東京都文京区の高岡正さんは「眼科なども深刻です。部屋を暗くして目の中に光を当てたりします。暗くて通訳の顔自体が見えません。通訳と近づくと感染のリスクも高まります」と話します。

 テレビの記者会見などで、透明マスクやフェイスシールドが使用されていますが、入手しづらく、「反射して見づらい」との意見もあります。


表情も文法/社会の理解進んで

 一般財団法人全日本ろうあ連盟事務局の倉野直紀さんの話 聞こえない私たちもマスクを掛けるなど予防は必要ですが、聞こえない私たちにとって、しゃべっている相手がマスクを付けると、コミュニケーション補助の一つである口の形を見ることができず困ります。積極的に筆談や、音声を文字に変換するアプリなどスマホを利用したり、身振り手振り、またコミュニケーションボードなどで意思を伝えてもらえると助かります。

 手話言語通訳を利用する場合も同様で、口の形が見えない状態で通訳を受けることは、お互いにきちんと伝わっているのか、大きなストレスになります。特に、診察時や薬局などでの説明の通訳の場合、初めて目にする言葉が出ることもあります。口元が見えず口の形から言葉を判別できないときは、間違って伝わっていないか、または言葉を正しく受け取れているか、通訳者と聞こえない私たち双方とも非常に不安があります。

 透明マスクやフェイスシールド等の利用がもっと普及することで、聞こえない人や手話言語通訳者の命・健康そして情報保障が守られていくことが大切だと考えます。そのためには、口形も手話言語の大事な要素であることや、聞こえない・聞こえにくい人たちにとって口形はコミュニケーション補助の一つであることについて、社会の理解がさらに進んでほしいと思います。


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