2020年5月29日(金)
東京美々卯
労組が解雇撤回求める
「味と文化と労働者守れ」
「うどんすき」の名店「麺類日本料理 美々卯(みみう)」(本店・大阪市)が、新型コロナウイルス感染拡大を口実に、関東6店を営業する「東京美々卯」の全店閉鎖・会社解散を発表し、従業員100人を解雇しました。従業員を組織する全労連・全国一般労働組合東京地本は、「ファンを裏切るな。労働者の生活を守れ」と解雇撤回・事業継続を求めています。(田代正則)
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美々卯は200年の老舗で、鍋料理「うどんすき」を1928年に考案。「大阪の味」として、東京でも1973年の進出以来、愛されてきました。
東京美々卯は4月19日、京橋店(東京都中央区)に従業員を集め、5月20日の関東6店舗閉鎖を発表。個別面談で「退職合意書」へのサインを迫りました。
店舗のひとつで店長をしていた男性(51)は、「仕込みなどで1日4時間しか寝られないなか頑張ってきた。オーナーから手を差し伸べてほしい」と訴えます。
社員寮に住んでいる福岡県出身の女性(21)は、6月20日までに退去を命じられています。「入社4年以上だと退職金が少し出ますが、3年目の私はそれもありません」と言います。
サインは拒否
サインは拒否しました。「高校にきた求人募集をみて、従業員思いの会社だと感じ、両親の心配を押し切って就職しました。解雇は納得できません」
全労連・全国一般東京地本との1995年以来の協定書では、解雇など労働条件の重大な変更、会社解散や事業所閉鎖をする場合は、事前に組合に提案し、十分な協議を行い、組合合意のうえで行うことになっています。
3月時点で、会社は組合に「6000万円の黒字だ」と発言し、コロナ禍を乗り切れるとしていました。
しかし、5月19日の団体交渉で会社は組合が求めた退職合意書へのサイン取り消しは拒否し、サインしていない組合員に対しても解雇を通知しました。20日、組合は不当解雇の撤回を求め、東京都労働委員会に不当労働行為救済を申し立てました。
組合側代理人の佐々木亮弁護士は、「会社解散が絡んでいるが、『整理解雇の4要件』でチェックを受けることになる」として、人員削減が必要な経営状態か、解雇回避の努力をしたか、労働組合との協議を尽くしたかなどを指摘しました。
次の世代にも
美々卯ホームページのお知らせには、「東京美々卯及び美々卯グループは無借金経営を続けています。大阪の本社ビル新築に向けて手厚い手元資金を用意していた折でもあり、外部から資金調達する必要性は、現時点で全くありません」として、伊丹空港に新店オープンの予定も紹介しています。
全労連・全国一般東京地本一般合同労組の梶哲宏委員長は、「東京美々卯は、大阪の薩摩和男美々卯社長がオーナーであり、2015年に結んだ和解協定書では、会社側としてサインしたこともある」と指摘。会社が責任を果たせば雇用維持は十分にできると強調します。
44歳の男性は、「高校を卒業して、人生の半分以上を美々卯で働き、味と文化を守ってきた」と強調。「コロナを乗り越え、次の世代に引き継ぎたい。国の支援制度などを使って事業を続けてほしい」と語りました。