2020年5月24日(日)
障害者支援柔軟に
自粛生活 合わせて
移動の介助、自宅でも
新型コロナウイルス感染症の流行に伴う外出自粛で、障害福祉サービスを使いながら社会生活を送る障害者の多くが、これまでとは違う生活を余儀なくされています。そんな中で、障害者の実態に合った柔軟な支援が求められています。(岩井亜紀)
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自粛で外出の機会が減り自宅で過ごす時間が増えた障害者は、自治体の判断のもと、移動支援を自宅で使えるようになっています。
頸髄(けいずい)損傷で首から下がまひしている家平悟さん(48)。妻と2人の子ども、義父母と東京都板橋区で暮らします。障害者団体の専従職員です。気管を切開しており、風邪でも重症化し人工呼吸器が必要になることがあります。そのためいまは、自宅で業務をこなします。
自治体判断で
新型コロナ感染拡大前までは、自宅で身体介護と家事援助を朝晩、1日合計3~4時間受けていました。そのほか、障害福祉サービスの一つ「移動支援」が月91時間あり、日中の外出や外泊などで使っていました。
「ほとんど自宅にいるので外出のための移動支援を使いません。逆に、日中に必要な支援の時間が足りなくなりました」
家平さんのように外出の機会が減る人が多くいることが想定されるとして厚生労働省は3月、事務連絡を出しました。自治体が必要と判断した場合は、移動支援を自宅で使っても差し支えないとしました。
家平さんは4月中旬、板橋区に相談。移動支援時のヘルパー、下堂前春太さん(29)が日中、家平さんの自宅で介助することになりました。下堂前さんは介護福祉士の資格があり、家平さんのたんの吸引をすることもあります。
「私の場合は、下堂前さんが外出時にやっていた支援を家の中でやっているので何も問題はありません」と家平さん。「移動支援と家の中でのヘルパーが違う場合、どちらで対応してほしいかを自治体に相談し、切れ目なく支援が受けられるよう自治体に求める必要があります」
対応不十分も
大阪市在住の相談支援専門員、高橋弘生さんによると、同市は、本人が不安で外出ができない場合、移動支援を見守りや安否確認等の在宅での支援に切り替えることが可能だとしています。「障害者一人ひとりの事情に合わせて柔軟な対応が必要です」と高橋さん。
他方で、柔軟な対応ができていないケースもあります。
視覚障害がある人が外出するときに支援するサービス「同行援護」。ガイドヘルパーが付き添います。
全日本視覚障害者協議会事務局長の藤野喜子(のぶこ)さんは「私が使うのはイベントなどに出かけるとき。今は、電車は控えるなど最低限の利用にするよう事業所から言われています」と話します。
全視協の仲間の中には、外食や散歩のときのガイドは断られ、病院や役所に行くにも時間制限されているといいます。
厚生労働省は4月28日、ヘルパーが単独で買い物を代行したり薬を受け取ったりできるとする事務連絡を出しました。
前出の家平さんは「行政側がもっと積極的に手立てを講じるべき」だと強調しています。