2020年5月24日(日)
仙台 コロナ禍 路上生活者に
若い人が次つぎ住み家を失う
住所なく「10万円」受け取れず
民間団体、支援に懸命
新型コロナウイルスによる休業要請や外出自粛は、路上生活者などもともと弱い立場にあった人たちの生活を直撃しています。仙台市の支援者団体は「最も困窮している人たちに届く支援を」と訴えています。(高橋拓丸)
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「活動のたびに新しい方、それも20~30代の若い方がよく来ます。リーマン・ショックや大震災の時もこんなことはありませんでした」。こう話すのは、NPO法人「仙台夜まわりグループ」の青木康弘事務局長(59)です。
同グループは2000年から炊き出し、就労支援、衛生支援など路上生活者支援を行っています。
相談急増100件超
これまで月に15~20件ほどだった相談件数が、4月以降、100件以上になりました。「鹿児島での住み込みの仕事が取り消しになり、宮城に何とか戻ってきたけど、仕事はなく部屋も借りられない」(30代男性)、「ネットカフェで生活していたが次の仕事がなく、もう泊まれない」(20代男性)など深刻な声が寄せられています。
支援活動にも影響が出ています。同グループでは、感染対策のためボランティアの募集を一時休止し、普段は10~15人ほどでやっている炊き出しや夜回りを半分以下の人数で行っています。公共施設も借りられなくなり、内容を大幅に縮小し屋外で活動しています。
相談の場も兼ねていた食事会は、パンなど食料を配るだけになり、創設時から続くカレーの炊き出しも既製の弁当にせざるを得ません。
一律10万円の給付金を、住所がない路上生活者が受け取ることは非常に難しい状況です。
青木さんは「当事者たちも『どうせ自分は受け取れない』と諦めてしまっている」と、市当局に対策を求めてきました。青木さんの訴えもあり、市は路上生活者への給付についての相談窓口設置の検討を始めています。
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市民の支援の輪
市民の支援の輪も広がりつつあります。
フードバンクから寄せられる食料は月100食ほどだったのが1・5倍に。「若い人たちが次々ホームレスになっていると聞いて驚いた」と10万円の給付金寄付を約束する男性など、新たな支援の申し出も相次いでいます。
青木さんは「行政はこれまで、路上生活者をまるでいないものとして扱ってきた面もあります。今こそ、非正規労働者を雇用の調整弁として扱うことを見直してほしい。私たちも自治体と協力しながら、シェルターの設置やワンストップの相談窓口など支援を進めていきます」と話します。