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2020年5月21日(木)

主張

再処理工場「合格」

核燃料サイクルからの撤退を

 原子力規制委員会が先週、日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)について規制基準を満たしているとの「審査書案」をまとめ、事実上「合格」させました。原発の使用済み核燃料の再処理を推進するとした安倍晋三政権のエネルギー基本計画に沿ったものです。

 しかし、再処理工場で使用済み核燃料からプルトニウムを取り出しても、それを利用する高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉となっています。再処理工場は無用の長物でしかありません。

プルトニウム大量保有

 再処理とは、使用済み核燃料を硝酸で溶かし、有機溶剤を使ってプルトニウムを抽出するものです。もともと核兵器用のプルトニウムを回収するために開発された技術を商業用に転用したもので、アメリカをはじめ各国の再処理施設では火災、爆発、臨界事故などがたびたび起きています。きわめて危険な施設です。使用済み核燃料に閉じ込められている大量の放射性物質を溶かし出すため、通常運転時でも原発より大量の放射性物質が放出されます。

 くわえて日本原燃の再処理工場では、建屋への雨水流入や排気ダクトが腐食して穴が開くなどのトラブルも相次ぎました。保守・点検をまともに行うこともできない日本原燃には、危険な施設を運転する資格はありません。

 日本の原子力開発は、消費した以上のプルトニウムを生み出す高速増殖炉を軸とする核燃料サイクルを目指してきました。原発の使用済み核燃料は、核燃料サイクルが実現されることを前提に、国内の再処理工場ができる前から英仏に委託して再処理してきました。

 ところが、「もんじゅ」は廃炉となり、日本が参加したフランスの高速炉開発も頓挫しました。政府は、普通の原発でプルトニウムを利用するプルサーマルも推進しましたが、プルトニウム利用の危険性に対する住民の反対が強く、運転は4基にとどまっています。

 核燃料サイクルが破綻していく中でも、英仏での再処理は進められ、日本のプルトニウム保有量は、約46トンにもなりました。

 プルトニウムは核兵器への転用が可能な物質です。核兵器保有国以外で日本のように大量のプルトニウムを保有する国はありません。そのことが国際社会からの不信を招くことになり、安倍政権は「プルトニウム保有量の削減」を言わざるを得なくなりました。

 このような状況で再処理工場を稼働させることは許されません。審査すること自体が論外です。

 安倍政権が、核燃料サイクルに固執するのは、原発の再稼働を進めるためでもあります。原発の使用済み核燃料プールは、早いところで3年で満杯になります。使用済み核燃料の搬出先がなければ、原発は稼働できなくなります。

うそだらけの原子力政策

 田中俊一・前原子力規制委員会委員長は、「日本の原子力政策は嘘(うそ)だらけでここまでやってきた」「最大の問題はいまだに核燃料サイクルに拘泥していること」だと語っています(『選択』2019年11月号)。

 うそやごまかしの原子力政策は、完全に行き詰まっています。安倍政権は、この現実を認め、核燃料サイクルから撤退すべきです。原発再稼働も断念し、原発ゼロを決断するよう求めます。


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