2020年5月11日(月)
主張
「新しい生活様式」
政府が責任果たすのが不可欠
政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が「新しい生活様式」を提言しました。新規感染者数が限定的となった地域でも長期にわたって感染拡大対策が求められており、そのために国民が予防を心掛けた行動をとる必要があるとして「実践例」を示しました。この中には個人の生活の仕方やプライバシーにかかわることも含まれているだけに、押しつけや強制があってはなりません。何よりも安倍晋三政権が生活・営業への支援と補償、PCR検査や医療体制拡充などを確実に実行し、感染収束に向けて国民が結束できるよう責任を果たすことが不可欠です。
個人の努力だけで進まぬ
提言は(1)一人ひとりの基本的感染対策(2)日常生活を営む上での基本的生活様式(3)日常生活の各場面別の生活様式(4)働き方の新しいスタイル―の四つの分野にわたって細かな実践例を挙げています。マスクの着用、手洗いなどすでに広く実行されていることもあります。一方、「誰とどこであったかをメモにする」との呼びかけにはプライバシー保護の観点から戸惑いの声もあります。実践例は人の集まりや会話にも制限を呼びかけています。感染を広げない行動は必要ですが、実行しない人をとがめ、非難することは人同士の対立、分断を招き、感染防止に向けた結束を壊すことになりかねません。
個人の努力だけでできないこともあります。「間隔を2メートル空ける」ことも感染防止に必要とはいえ、イベントや飲食業では客席数を減らさざるを得ず、事業者が大幅な減収を覚悟しなければなりません。その分をどう補償するのか、政府の対策がないと「3密の回避」は進みません。
買い物、娯楽、スポーツについては「すいた時間を選ぶ」ことが推奨されています。ならば働く人たちの買い物や帰省、行楽が特定の日に集中しないよう、休みたいときに安心して休めるような社会にすることが欠かせません。
「働き方」ではインターネットを使って自宅などで働くテレワークも推奨されています。家庭に仕事が持ち込まれることによって長時間労働が横行しかねません。職場を離れた働き方でも労働時間は管理されなければなりません。労働時間を使用者が把握、記録し、残業代を支払うことは当然です。
経団連がコロナ危機を「働き方を変えていく契機」と主張していることは要注意です。経団連はこれまで「残業代ゼロ制度」の導入を政府に働きかけて実現し、さらに「柔軟な働き方」の名で労働法制の規制緩和を狙っています。ウイルス感染症に強い社会を築くために必要なことは大企業の利潤極大化を目的とする「生産性向上」ではありません。「人間らしく働く」ルールの確立です。
安倍政権が行動を変えよ
国民は外出を控え、業者は売り上げを大幅に減らしても営業自粛に協力し、全力をあげてウイルス感染症に立ち向かっています。補償と医療体制の整備は政府の責任です。その対応はあまりに遅く、規模も不十分です。ましてコロナ危機のさなかに、多くの人が反対している検察庁法改定の国会審議を強行したり、危機に乗じて改憲論議を推し進めたりするなど論外です。国民に結束と協力を呼びかけるならまず安倍晋三政権が「行動変容」をすべきです。