2020年4月21日(火)
新型コロナ対策
子どもの権利保障の観点を
改訂版『子どもの権利ノート』 子ども全国センター 糀谷陽子さん
遊べる・学べる・意見を言える――知恵出し合い守ろう
子どもの権利・教育・文化 全国センター(子ども全国センター)は3月、最新の国連勧告を掲載した改訂版『ポケット版 子どもの権利ノート』を発行しました。「新型コロナウイルス感染症対策に子どもの権利保障の観点を」とよびかける、同センター事務局長の糀谷(こうじや)陽子さんに、思いを寄せてもらいました。
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改訂版『権利ノート』には、国連子どもの権利委員会が2019年3月に日本政府に対して行った第4・5回の勧告を含め、これまでのすべての勧告や、「子どもの権利条約の精神に則(のっと)る」と定めた児童福祉法など関連法規も収録しています。
学校休校を通じてみえてきたものは
再び休校が広がっています。子どもの命と健康、安全を守ることを第一に置きながらも、子どもの成長にとって、学校で皆と学んだり遊んだり、外で友達と一緒に過ごしたりすることがどんなに大切なことだったのか、を考えさせられました。
多くの子どもが、突然の休校に戸惑っています。「なぜ休校にするのか、この事態にどう立ち向かったらよいのか、子どもとしっかり話し合った上で休校に入りたかった」と感じる先生方も少なくないと思います。そうやって話し合うことは、実は貴重な学びの機会であったと同時に、意見を聴きとってもらえる安心感が成長のエネルギーになる、と思うのです。
4月6日に「子どもの権利条約31条の会」が「緊急アピール」を発表しました。「子どもの主食」である遊びが禁止・抑制され、文化・芸術への参加の権利が危機にさらされていることに警鐘を鳴らし、生活と文化を守るために、「子ども・市民の声を聴き、知恵を出し合い学び合おう」とよびかけています。
8日には、国連子どもの権利委員会が「新型コロナ感染症に関する声明」を出し、各国政府に対し「子どもの最善の利益」という原則を反映した対応を求めました。子どもの休息や余暇、レクリエーション、文化的・芸術的活動に関する権利も含まれています。
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あまりにも競争的 日本社会への指摘
これらの指摘は、19年の第4・5回勧告の内容とも重なるものです。
勧告は、「あまりにも競争的な制度を含むストレスフルな学校環境から子どもを解放すること」を求めています。今回初めて「あまりにも」という言葉が使われました。同時に「社会の競争的な性格により子ども時代と発達が害されることなく、子どもがその子ども時代を享受」できるようにと、日本社会が競争的だと指摘したのも初めてです。
「子ども時代を享受」するために休息と遊び、文化活動の権利は欠かせません。勧告は今回も、そのための十分な予算と時間の保障を求めています。休み時間や放課後、劇団やオーケストラの学校での公演は子どもにとって大切な時間です。
子ども全国センターは全日本教職員組合などと一緒に、全員参加の全国学力テストをやめて抽出にするよう求める、署名や意見書採択にとりくんでいます。今年の全国学テは中止になりましたが、大阪府教育委員会は、高校入試に結果が反映されるチャレンジテストの6月実施を表明しています。勧告も力にして、全国に運動を広げたいです。
勧告はまた、子どもに影響を与えるすべての事柄において、子どもが自由に意見を表明する権利が尊重されていないと懸念し、権利が確保できる環境を求めています。
今回の事態に関わって小・中学生が新聞に投書したり、高校生がインターネットで署名を集めたりしています。家庭や学校のこと、気候変動や平和のことまで含めて、子どもが関係するすべてのことについて意見を自由にいい、その力をのばし、発揮できる場をつくることが、いっそう求められていると思います。
改訂版『権利ノート』を子どもが安心して暮らし、学び育つことができる環境をつくる各地のとりくみに役立てていただければうれしいです。
■国連子どもの権利委員会が各国政府にコロナ問題で求めたこと(主なもの)
・人権の制限を必要最小限とし、予算の配分でも子どもの最善の利益を確保すること
・子どもが休息、余暇、遊びや文化芸術活動に対する権利を享受できる代替措置を、創造的に探し出すこと
・オンライン学習が、不平等を悪化させず、生徒・教員間の相互交流に置き換わることがないようにすること
・子どもたちに栄養のある食事が確実に提供されるよう、緊急に措置をとること
・ぜい弱な状況に置かれている子どもの保護