2020年4月20日(月)
主張
核兵器廃絶の展望
脅威に立ち向かう共同今こそ
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今月下旬からニューヨークの国連本部で予定されていた5年に1度の核不拡散条約(NPT)再検討会議が延期されました。一方、同会議に合わせニューヨークで開催予定だった原水爆禁止世界大会は25日にオンラインで開催されます。世界の運動が被爆者とともに、「核兵器のない世界」への展望と決意、希望を力強く発信する重要な機会として注目されます。
許されぬ大国の横暴勝手
新型コロナ感染拡大の中、国連のグテレス事務総長は、世界が共通の危機に立ち向かうために、「あらゆる場所での即時停戦」を呼びかけました。ローマ教皇庁のフランシスコ教皇も「今は武器をつくるのではなく、命を救うために巨額を費やす時だ」と訴えました。いま求められているのは、戦争や軍拡ではなく、人の命を救うための国際協力と大胆な支援です。
新型コロナという世界的な脅威のもとで、核大国の「自国優先主義」の道理のなさも浮き彫りになっています。米英仏ロ中の五大国は、NPTの下で、他国には核兵器の保有を禁じながら、自分たちは核保有の特権を独占し続けています。人類を核破局の危機にさらしながら、「自国の安全」には核兵器が必要だなどという、横暴勝手はもはや許されません。
2017年に採択された核兵器禁止条約の批准は、発効に必要な50カ国の7割にまできました。禁止条約を生み出した、圧倒的多数の国と市民社会が共同する流れを前に、核兵器に固執する勢力は追い詰められています。
核五大国は3月、NPT発効50年にあたって共同声明を発表しました。禁止条約を非難し、核軍縮の先送りを画策するこれらの国々も、NPT第6条が定める核軍備縮小撤廃の交渉を「誠実に行うことを約束する」と表明せざるをえませんでした。禁止条約を早期に発効させ、NPTの義務と「核兵器廃絶の明確な約束」など再検討会議の合意の実行を迫ることが、ますます重要となっています。
今年は広島・長崎の被爆75年です。戦争被爆国である日本政府にたいして、世界からいっそう厳しい視線が注がれています。安倍晋三政権は、核保有国と非核国との「橋渡し役」を果たすといいますが、目立つのは、アメリカなど核保有国への追随姿勢ばかりです。「ヒバクシャ国際署名」は全国の7割以上の自治体首長が署名し、1千万人を大きく超えました。禁止条約の調印批准を求める自治体決議も448に達しています。安倍政権は国民の悲願に応え、禁止条約に署名・批准し、核保有国にも行動を訴えるべきです。
さらなる創意発揮のとき
コロナ問題をめぐって、グローバル化する資本主義のあり方が問われ、世界のあるべき姿も議論されています。気候変動も差し迫った課題です。平和で公正な世界をめざして活動する全ての運動が、いま役割を発揮するときです。
高齢化した被爆者は、コロナ感染の危険と不安にさらされる日々を送っています。被爆者に寄り添い、支える活動もこれまでにもまして重要となっています。
国際社会の共同と連帯を築き上げてきた原水爆禁止運動には、困難な状況の中でも、さらなる創意を発揮して、その使命を果たすことが強く期待されています。