2020年4月18日(土)
医療体制 支援早く
資材も人員も不足 感染出れば運用停止も
患者受け入れ病院
新型コロナウイルス感染症の患者が急増する中で医療機関は対応に追われ、通常の診療体制を維持することが難しくなっています。感染者を受け入れている東京都内の病院で働く医療関係者が現場の状況を語りました。(武田祐一)
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新型コロナウイルスは飛沫(ひまつ)と接触で感染するとされています。
この医療関係者は「院内感染を防ぐために新型コロナ患者は、病室の空気を外に出さないため室内の気圧を低くした陰圧室で感染対策を行っています。しかし陰圧室はほぼ満室です。現在は陽性と疑われる患者は陰圧でない部屋や大部屋も使って管理している」と話します。
新型コロナの患者が増える中、陰圧室がコロナ患者専用になり、これまでその病室に入院していた肺がんなどの呼吸器を患っている人は転院させているといいます。「ベッド数の確保と呼吸器疾患を看護できるスタッフの確保のためですが、感染者の受け入れのために、空けた病床も連日、埋まってきています」
院内での感染拡大を防ぐために、外来診療や新規の入院、手術も制限しており、入院患者への面会も中止しています。
感染防護困難
いま医療者の感染予防が難しくなってきている、といいます。理由の一つは、予防のための資材が足りないこと。
「マスク、使い捨てのエプロン、帽子などの防護具が不足しています。これまでは1回ごとに新しいものに交換していましたが、1日1枚に節約して使わざるを得ない状況です。マスクは心もとない状況です。消毒液は、まだありますが『大切に使ってください』と言われています」
せきで飛び出す飛沫感染を防ぐには、高性能のマスクなど防護服が不可欠。接触感染を防ぐにはこまめな消毒が必要です。これらの資材不足は深刻で、医療者は感染への不安を抱えて仕事をしているといいます。
もう一つの理由は、感染者の見分けがつかないという問題です。
「PCR検査がなかなか受けられないからです。簡易検査の導入なども含めて、疑いのある人全員がすぐに検査を受けられる体制にしないと感染拡大を防げない」と訴えます。
感染者の受け入れ体制で気になることがあるとも。建物内の経路が、感染者専用になっていないことです。
「感染者が通るときには、感染拡大を防ぐため、通路周辺を封鎖します。そのたびに、ほかの作業が中断される。どこの医療機関でも感染者の出入り口や通り道、待機場所などを確保するのは大変でしょう」
空白生む危機
いま、警戒しているのはスタッフに感染者が出ることです。
「もし感染者が出ると医療機関の運用が止まりかねない。急病患者を受け入れられなくなります。地域の医療体制に空白を作ることになりかねない」と指摘します。
今回の問題が起きる前から、日常的にスタッフの人数に余裕はなかったと話します。
「いま複数の人が感染して休むとなると、看護師ならば、夜勤があり、そこからは人を割けません。病棟の体制を縮小して応援に入ることになります」
今までにない事態でスタッフのストレスが高くなっているといいます。「医療関係者は責任感が強い人が多く、気持ちを張って頑張っている人が多い。この点でも、いつまで続くか心配です。早く体制強化のための支援がほしい」