2020年4月17日(金)
保育園は今
感染予防へ続く模索
「可能な限り登園自粛を」 職員の休暇創設
7都府県での緊急事態宣言から10日。宣言が出た自治体の保育園では、感染拡大を防ぐ模索が続いています。(染矢ゆう子)
大阪市城東区の今福保育園園長の田辺伸子さんは「とにかく保育園を止めてほしい」と話します。
大阪府では「適切な感染防止策をとったうえで開所を」という知事の要請がありました。同市は、就労などでやむを得ず保育が必要な場合以外は「可能な限り登園自粛を」と要請。保護者からは「休園と言ってくれたら会社を休めるのに」という声もあります。
所得補償をぜひ
同園は保護者に「保育園では濃厚接触が避けられません」と伝えました。登園する子どもは3分の1に減っています。「職員や子どもが感染してからでは遅いんです。登園は医療関係の労働者をはじめ、どうしても必要な保護者に限り、中小企業やパートで働く保護者にも所得補償をして、安心して休めるようにしてほしい」と田辺さんは話します。
全家庭に電話し
東京都内の保育園。保護者の勤務先に対し、登園自粛を要請する文書を出しました。120人定員で、来ているのは25人ほど。職員の感染リスクを減らすため、法人として「緊急新型コロナ感染防止休暇」(常勤7日。有期職員は週の所定労働日に応じて)を新設。職員は交代で休みます。
登園は園庭から。職員、保護者、子どもは検温と消毒をしてから園舎内に入ります。園長は「会議はなし。休憩室が狭いので、職員は食事をとったら、空いている保育室に移動して休みます」と感染防止に気を使います。
2歳から5歳の子どもたちは異年齢で園庭で遊びます。気になるのは、1カ月来られない子どものことです。
「在宅で仕事をしている保護者が仕事に集中できず、家庭内暴力などが起きていないか心配です。全家庭に電話をし、大変な方には登園してもらっています。感染リスクを減らすことと矛盾するので、どこまで許容するのか葛藤する」と園長はいいます。「国の最低基準ギリギリの人員配置では、休校や休園などの緊急事態に対応できません。職員配置基準を引き上げてその職責の重さに見合った処遇向上が必要です」
全国保育団体連絡会は9日、保育所への支援の抜本的強化を政府あてに要請しました。
内容は▽マスク・消毒液等の確保▽保健所の相談や支援を受けられるようにする▽不足する人員確保を現場任せにしない▽原則開所の考え方を見直し、地域状況を踏まえて休園等を行えるよう考え方を示す▽土曜日保育などが実施できなくなった場合も公定価格や補助金を減額しない▽職員配置基準の引き上げや処遇の向上など制度の抜本的な改善をはかる―などです。
政策の転換必要
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保育研究所の逆井直紀さんはいいます。
「全国の保育園ではマスクやアルコール消毒液が手に入らず、買いに行く時間もありません。待機児童解消のためにとつめこみが進んでおり、部屋の中で密接な関係をつくらず過ごすなど無理です。一方で、子どもの命と豊かな成長を守り、医療従事者を含め子育て家族の生活を支えるのも保育所の重要な機能です。その機能を果たすためにも、保育環境の充実へと政策を転換することが必要です」