しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年4月12日(日)

世界覆うコロナ禍

パンデミック宣言1カ月

図:主な国の死者・感染者数 グラフ:3月11日から約1カ月にわたり世界で感染が確認された人数 グラフ:世界の死者数(累計)

拡大図はこちら

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界保健機関(WHO)が3月11日にパンデミック(世界的流行)を宣言してから1カ月がたちました。米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計によると、世界の死者は日本時間11日午後3時現在、10万人超となりました。米国では10日、世界で初めて1日の死者が2000人を超えるなど、依然、深刻な状況が続いています。

死者 10万人突破

アフリカなど拡大懸念

 新型コロナウイルスは今年1月、中国中部・湖北省武漢市で爆発的感染が確認されて以来、瞬く間に世界中に広がりました。CSSEの集計によると、4月11日現在、185カ国・地域で感染者が確認されています。

 感染拡大の中心は現在、発生源とされる中国から、欧州・米国に移っています。CSSEによると、11日までに世界で約170万人の感染が確認され、ほぼ半数が欧州です。一国としては米国が最も多く、約50万人を超えています。

 死者数もイタリアや米国、スペイン、フランスではそれぞれ1万人を超え、イタリアと米国は2万人に近づきつつあります。

 今後、アフリカ諸国など医療体制がぜい弱な地域への感染拡大が懸念されます。

 急速な感染拡大に対し、国連のグテレス事務総長は3月31日、「国連の創設以来、われわれが直面している最大の試練」だと表明。各国の首脳も「東西ドイツ再統一や第2次大戦以来の最大の挑戦」(メルケル独首相)、「われわれは(ウイルスとの)戦争状態にある」(マクロン仏大統領)と危機感を示しています。

 WHOのテドロス事務局長は4月10日、オンラインで記者会見を行い、欧州の一部で感染拡大のペースが多少落ちてきていることを「歓迎」しつつ、「規制緩和が早すぎるとウイルス感染が致命的に復活してしまう」と警告しました。

経済 「破局的な損失」直面

労働者27億人に都市封鎖の影響

 国際労働機関(ILO)はコロナ危機について戦後、「最も深刻な危機」と警鐘を鳴らしています。ILOによると、新型コロナウイルス拡大による都市封鎖は全世界の8割に及ぶ27億人の労働者に悪影響をもたらし、12億5千万人が、給料の減少や一時解雇の危険に直面しています。

 小売り、宿泊、飲食、そして製造業が打撃を受けています。特に発展途上国では、これらの職種は、法令などによる公式の取り決めの適用を受けない「非公式経済」分野に属し、無防備な状態にさらされています。コロナ感染拡大防止の最前線となっている医療・福祉などの分野では女性の割合が高く、感染リスクにさらされています。

 国境を越えたサプライチェーン(部品供給網)の寸断や大幅な需要減が、世界貿易を縮小させています。世界貿易機関(WTO)は、2020年の商品貿易量が前年比最大32%減少すると予測。国連貿易開発会議(UNCTAD)は感染拡大が長期化した場合、海外直接投資が20年から21年にかけて30~40%落ち込むと見込んでいます。国連世界観光機関(UNWTO)は20年の国際旅客数が19年比で20~30%(2億9千万~4億4千万人)減少するとしています。世界経済は今、「破局的な損失」に直面しているのです。

補償 欧米は大規模に

国民の命と生活守るため

次々打ち出す

 「経済的影響を緩和し、雇用を守るため可能なことすべてを行うと約束する」(メルケル独首相)―。感染拡大の深刻さが増す米国や欧州では、国民の命と生活を守るため大規模な補償措置を次々と打ち出しています。

 厳しい外出制限などを設け感染拡大の防止を図ることに関しても「人々の生活や仕事に与える影響は甚大だ。だからこそ大規模な経済政策を実施する」(ジョンソン英首相)と、補償が一体であることを表明しています。

日本は…補償なき自粛要請

 日本の対策はどうか。安倍首相は緊急経済対策を「世界最大規模の108兆円」と自慢しますが、国が新たに直接支出するのは一般会計で16・8兆円にすぎません。金融機関を通じた融資や、税・社会保険料の納付猶予を含めた“水増し”です。

 外出自粛要請や休業要請と一体の補償を行う姿勢がないことが、最大の問題です。これでは生活不安は解消されず、感染拡大防止にも不十分です。その中身を見ても、減収世帯への1世帯あたり30万円の現金給付や、売り上げが減った中小企業・個人事業者への給付は対象条件が厳しく、生活に困窮している多数の国民を「線引き」することで不公平をつくることになります。

表:欧米諸国の外出制限何度の措置と主な補償

子ども 9割が学校行けない

格差の拡大や栄養不足懸念

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の10日時点での集計によると、感染拡大の影響を受けて、全土で学校を閉鎖している国・地域は180以上に上ります。全世界の児童・生徒の91・3%にあたる約15億7600万人が、授業を受けることができていません。

 子どもの学習権を保障するため、自宅からインターネット上で授業のビデオを見たり、課題を提出したりする遠隔授業を導入している国・地域もあります。欧州各国では3月上旬以降に遠隔授業を実施。感染者の増加ペースの鈍化を受けて、学校再開の時期を探っています。

 休校が長引く中で懸念されるのが、格差の拡大や子どもたちの栄養不足などです。

 ユネスコは▽貧困世帯などではインターネット利用が困難な場合もある▽学校給食に栄養補給を頼ってきた子どもたちは栄養不足に陥る▽在宅の子どもの世話をするために親が仕事に出られず収入が減る▽社会的な交流の場がなくなる―などの課題を指摘。各国に対策を求めるとともに、必要な支援を行う姿勢を示しています。

DV急増 脅かされる女性の健康・安全

対策 ジェンダーの視点を

表:新型コロナ流行下でのDV増の状況

 国連ウィメンは、各国政府に決定や政策において「ジェンダーの視点」を盛り込むよう要請してきました。ジェンダーの視点は、「女性や女児たちだけでなく、すべての人によりよい結果をもたらす」と強調しています。

 ロックダウン(都市封鎖)では、女性労働者の多い旅行業や飲食産業が大打撃を受けています。社会を支える医療、介護、ソーシャルワーカー、販売やオンライン授業などの分野でも女性たちが主力を担いながら、賃金は男性よりも低いまま。そのうえ家庭ではDVが急増し、女性の健康や安全が緊急の課題になっています。

 国連のグテレス事務総長は6日、「DVからの女性の保護」を対策に盛り込むように各国に要請しました。世界に「停戦」を呼びかけ新型コロナ対策に集中するよう求めましたが、「多くの女性や女児にとっては、最も安全であるべき自宅に最大の脅威が迫っている」と指摘。世界各地でDVが急増していると警告しました。

 9日にもツイッターで「女性の指導力と貢献がウイルス対策と復興努力の中心にすえられるべきだ」と改めて強調しました。


pageup