2020年4月11日(土)
新型コロナ DV被害増加・悪化 対策を
在宅夫の監視に避難できず
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新型コロナウイルス対策で、学校休校や外出自粛が続いています。家で過ごす時間が長くなるなかで、DV(配偶者などパートナーからの暴力)や児童虐待の悪化が相談現場に寄せられています。(吉岡瑞代)
NPO法人「全国女性シェルターネット」は先月末、DVの深刻化や増加に必要な相談や支援体制を求め、安倍晋三首相らに要望書を提出しました。阪神・淡路大震災や東日本大震災時の経験則からも悪化が予測され、非常時には弱者へのしわ寄せが大きく、見過ごされがちだとして早急な対策を求めています。
つながりにくい
すでに起きている状況では「相談センターが面談を中止するところも多く、DVが悪化していても相談支援につながりにくくなっている」「児童相談所の相談はかなり増加している。夫が家にいることで妻や子どもに高圧力でコントロールがひどくなり電話(相談)が増えている」「面談をしたくても電車に乗るのも感染が怖くてできず、手軽なSNSで相談できるようにしてほしいという当事者からの要望がある」などがあります。(別項参照)
要望では、命にかかわる事態を防ぐために、緊急時でも相談窓口を閉じず、電話相談の回線やDVシェルター、児童を保護する施設を増やすことを求めています。また、新型コロナウイルス対策で、自治体の一時保護等の措置業務が滞ることを想定して、被害者が市町村や民間シェルターに逃げこんだ時には、自動的に一時保護を始めることを要望しています。
行き渡る配慮も
一時給付金などを導入する場合には、DVを理由に自宅を出ている配偶者や子どもにも行き渡るようにするなど、特別措置の対応も必要だとしています。
フランスでは、外出制限が始まってから1週間でDV被害が32%増加。同国やイタリアなど欧州では、DV増加への対応策を政府がすでに出しています。
全国女性シェルターネット代表の北仲千里さんは「危険な状況に置かれた方が相談につながれないことのないように、命にかかわる事態を防ぐために、今すぐに手を打ってほしい」と話します。
すでに起きている状況(要望書から)
▽夫が在宅ワークになり、子どもの休校で、夫が家族に身体的な暴力をふるうようになった。
▽かねてからDVで母子で家を出ようと準備していたが、自営業の夫が仕事がなくずっと在宅し、家族を監視するようになったので、避難が難しくなり、絶望している。
▽DV夫と家庭内での別居中。発達障害の子どもがいて離婚できない状況。学校が休みになり、学童や子ども食堂も休みになり、子どもが家にいることで、夫から妻、夫から子どもへの暴力が増え、妻も子どもへの暴力をしてしまう状況が起きている。
▽配偶者ビザの外国人DV被害者で離婚せずに別居の場合、民間だけにつながっている場合があり、(直接補償を)受けとれるかを心配している。
▽住民票を移さずに避難して支援措置も受けていない。夫が公務員、警官の場合など、金銭的支援を直接自分の名前を出して自分で申請できない、するのが怖い。