2020年4月3日(金)
「所得100億円超」 過去最高31人に
公的マネーが恩恵に
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2018年に申告所得が100億円を超える納税者が31人となり、過去最高を大きく上回っています。3月31日に国税庁が公表した2018年分の「申告所得税標本調査結果報告」からわかりました。安倍晋三政権による公的マネーを投入した株価つりあげ政策で、富裕層に巨額の利益がもたらされていることを示すものです。
合計で5000億円超
国税庁が所得100億円超の層に関するデータの公表を開始したのは2005年分から。これまでは13年の18人が最高でした。18年は、その1・7倍にまで増加しました(グラフ1)。31人の所得の合計は5039億円で、1人当たり162億円です。
所得の内訳は、株式譲渡所得が4165億円、配当所得が725億円、土地等の譲渡所得が103億円などとなっており、ほとんどが株式による利益です。
安倍政権は、16年8月以降、「年間6兆円」のペースで日銀の資金を株式市場に投入するなど、なりふり構わぬ株価対策を進めてきました。この日銀資金の投入は、上場投資信託(ETF)を日銀が購入する手法で実施されます。購入するのは株価が下がった日です。18年には、3月に8333億円、10月には8700億円など、ETF購入額が急増、年間では6・5兆円がつぎ込まれました。こうして高い株価が維持されたことで、富裕層が高値で保有株を売却し、巨額の利益を手にすることができたのです。
優遇は税制でも
本来なら、こうした巨額の所得には、所得税の最高税率45%(住民税を合わせれば55%)が適用されるはずです。ところが、株式や土地の譲渡所得は、「分離課税」といって、他の所得と切り離して低い税率で課税されます。高額所得者ほど、譲渡所得の割合が高いため、税負担率が低くなってしまいます。今回の国税庁のデータで計算しても、所得が1億円程度を超えると税負担率が下がり、所得100億円超の31人の負担率は、18・8%と、所得1500万~2000万円の層の18・6%と同じ程度の負担率になっています。(グラフ2)
公的マネー投入で利益を得た富裕層に応分の税負担を求めるため、不公平税制を改めることが急務です。
(垣内亮 日本共産党政策委員会)