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2020年3月28日(土)

新型コロナ 消毒液が足りない

身の危険感じる 不安かかえ勤務

千葉 訪問看護ステーション

 新型コロナウイルス対策でマスク同様アルコール(エタノール)消毒液などの不足が続きます。感染拡大で医療体制の強化が求められるなか、医療従事者から「店頭の陳列にもないし、ネットでも購入できない」と不安の声が上がっています。(遠藤寿人)


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(写真)千葉県柏市内の訪問看護ステーションで利用している消毒薬

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(写真)街の小売店ではマスクだけでなく、消毒薬も売り切れになっています=東京・渋谷区

 住み慣れた家や地域で医療や暮らしをサポートする訪問看護。千葉県柏市で、訪問看護ステーションの所長を務める40代の看護師は「深刻なのは、自宅でたんの吸引が必要な患者さん。感染予防のために、器具をアルコール綿で消毒する必要があるのに、アルコール綿が手に入らない」といいます。家族から「分けてもらえないだろうか」と相談を受けましたが「数はないし無理。心苦しい」と胸の内を話します。

備蓄品でつなぐ

 看護師が持ち歩く消毒液は、備蓄品でなんとかつないでいます。同ステーションの備蓄は、アルコール消毒液が500ミリリットルのボトル2本と少々。「簡単に使い切るわけにはいかない」「液体せっけんでの手洗いで8割がた感染源を流せる」と手洗いの徹底した励行をしています。

 事務所に出勤すると液体せっけんと流水で手洗いします。アルコール消毒液の代用として、キッチンハイターを薄めて、机、ドアノブ、キーボードなどを固めに絞った雑巾で拭き掃除します。

 訪問看護では原則、利用者の家に到着して手洗い、体に触れるケアの前に手洗い、家を退出する前に手を洗って出てきます。

 所長は「利用者に感染者が出れば必然的にアルコール消毒液が必要になる。物がないと自分たちの身の危険も感じる。ウイルスを付着させて訪問すれば、利用者に広げる危険もある。うつらない、うつさない対策が必要」と力を込めて語ります。

 日本看護協会(福井トシ子会長)は「マスクに加え、ガーゼ、消毒液も不足し、適切な感染防止、感染拡大予防に取り組むことが難しい状況」「供給の目途が立たない中、患者への感染予防のみならず、自身を感染から守ることも難しくなり不安な思いで勤務している」としています。

 全国介護事業者連盟の調査では、3月の1カ月間で、消毒用アルコールの確保が「ゼロ」となる事業所が約3割弱あります。

 アルコール消毒液などの不足に歯止めはかかるのでしょうか。

 2月の生産量は一般用・医療用を合わせて昨年月平均比1・8倍の約170万リットルに増産。1回に2ミリリットル使う計算で、1日当たり約2800万回が消毒可能な量です。

 消毒液のアルコール濃度は80%前後に設定されています。原料のアルコールを製造・販売する事業所などでつくるアルコール協会(東京都中央区)によると、アルコールの大部分は「国産」です。そのうちアルコール消毒液の製造に回る量は、全体の1割弱にすぎず、「不足感はない」といいます。

受注は昨年超す

 消毒液を製造する「ジェクス」(大阪市)は、兵庫県の工場をフル稼働し、従業員を2交代制にするなどして対応しています。

 同社総務は「多くの注文をいただいている。追いつかない状態。納期はちょっと…。控えたい」と歯切れが悪い対応です。

 300ミリリットル入りのメーカー商品は、昨年で年間80万本を製造。今年は1月からの2カ月で40万本を超え、4月からの3カ月で100万本を受注しています。

 工場では「すでに昨年の年間受注を超えています。納期はちょっと言えないですね。消毒液があっても、別のメーカーでつくる容器がないと充てんできないことも。工場は気が抜けない状態が続いています」と話します。


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