2020年3月28日(土)
「自粛要請するなら支援を」
増税にコロナ“最後の一撃”
中小業者「経営努力超えている」
新型コロナウイルスの感染が拡大し、売り上げが減っている中小業者から「このままでは廃業せざるをえない」という声が相次いでいます。「これほどの打撃は、経営努力の範囲を超えている。営業や地域社会を守るために国の支援を」と訴えます。(青柳克郎)
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「消費税10%の影響で売り上げが2割程度、減っているところにコロナが来た。増税前に比べれば8、9割減で、売り上げゼロの日もある。消費税が5%、8%と上がり、客は減り続けてきたが、最後の一撃という感じだ。従業員の給料を払うのも苦しい。もう店を閉めるか、悩んでいる」
東京都内で韓国料理店を営む男性が、苦渋の表情で話します。
消費税増税による客足減を、新メニューの開発やドリンク類の半額サービスといった経営努力で打開しようとしていた矢先のコロナ問題です。例年、3~4月は歓送迎会でにぎわいますが、今年の予約は皆無です。
手元の資金も尽きかけており、メニューを減らし、プルコギ(韓国風すき焼き)やサムギョプサル(豚バラ焼き肉)など定番メニューに資金を集中して食材を仕入れています。4人いるアルバイトも全員、休ませており、退職した人もいます。
男性はいいます。
「国や都は、『不要不急の外出を控えよ』というのなら、その影響をもろに受ける飲食業への補償を考えてほしい。こんななかでも、うちは消費税を年100万円以上、払っている。消費税減税や税金や保険料の減免などの支援があれば、まだ明日が見えるが…」
中小業者の苦境を受け、全国商工団体連合会はこの間、各地で相談会を開くとともに、緊急対策を国に要請。個人事業主・フリーランスへの休業補償や、税・社会保険料の減免・猶予などを求めて運動を強めています。
“一人の業者もつぶさない”
融資制度活用 民商が相談会
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東京都渋谷区で30年近く生花店を営む男性(70)は「これまでにない売り上げ減で、廃業まで考えざるをえない」と話します。
「開店以来、バブル崩壊や消費税の影響を受けて売り上げが減り続けてきた。消費税10%でさらに売り上げが落ち、運転資金が尽きかけているところにコロナが来た。花屋は店先に多彩な種類を並べる必要があり、売れなくても商品を仕入れなくてはならない。市場への支払いも苦しくなっている」
質の良いもの
3月の売り上げは、昨年に比べて半分以下。彼岸の墓参りも「感染を防ぐため、電車に乗りたくない」と行かない人が多く、卒業式など学校に納入する花も3分の1がキャンセルとなりました。
「本来、3~4月は学校や企業からの需要がある書き入れ時なのだが…どこまで落ち込むか、先が見えない」
男性は週6日、市場に行き、質の良いものを競り落としています。従業員の女性は「お客さんから『この店で買った花は長持ちする』と喜ばれています」と誇らしげです。
消費税減税を
男性は、営業を続けられるよう、国の支援を希望します。
「うちの場合、家賃だけで月40万円を払っている。元気になれば、また税金を納められるのだから、いまは家賃助成などの直接的支援がほしい。そして、なによりも安心して庶民がお金を使えるようにすることが大事だ。消費税5%で景気を回復させてほしい」
全商連などの取り組みを通じ、この間、一律休校に伴う個人事業主・フリーランスへの一定の補償や、事実上の無利子・無担保融資などが実現しています。
各地の民主商工会も積極的に相談にのり、資金繰りなどの解決にあたっています。
東京都北区の北区民商は、相談会の案内ビラを3000枚作製。SNSも活用しています。「人が商店街に来ず、昨年比で売り上げは9割減」(玩具店)、「飼い主が旅行に行かなくなり、ゴールデンウイークも予約ゼロ」(ペットシッター)など実態は深刻で、行政による融資制度の活用など知恵をしぼっています。
鳥居峰夫事務局長(54)が話します。
「長年の不況で業者の手持ち資金は細っており、いまの売り上げ減が1、2カ月と続くと廃業する業者が続出しかねません。消費税増税の際、うちの会員でも廃業する方がおり、断腸の思いでした。一人の業者もつぶさないよう、全力を尽くしたい」