2020年3月4日(水)
中絶合法化法案提出へ
アルゼンチン 大統領が表明
女性の人権尊重運動受け
南米アルゼンチンのフェルナンデス大統領は1日、国会での演説で人工妊娠中絶を合法化する法案を10日以内に議会に提出すると明らかにしました。妊娠・出産に関わる女性の権利の尊重や中絶の全面合法化を求める運動の後押しを受けたもの。合法化に反対した右派の前政権との違いを鮮明にした形です。
フェルナンデス氏は、妊娠初期の段階での中絶を合法化し、中絶を決断した女性が適切な医療を受けられるように「最優先で取り組む」と表明。性教育や避妊の啓発活動をしていくとも約束しました。
同国の現行法では、性的暴行の被害による妊娠や、母親の健康に危険が及ぶ場合にのみ中絶が認められています。しかし、手続きの煩雑さや高額の費用のため「非合法」で危険な中絶手術を受けざるを得ない例が多数あります。女性団体の推計によれば、1983年以降で3000人以上が命を落としました。
中絶に反対するカトリックの影響が強い同国国会では2年前、大規模な運動の広がりを受け、中絶を合法化する法案の国会での審議が初めて実現。しかし、小差で否決されました。
労組や人権団体などで構成する「安全な無償の合法的中絶の権利を求める全国キャンペーン」で活動する医師のルス・ディアス氏は、現地紙トリブノのインタビューで、「街頭での運動の後押しを受けた発表だ」と評価。「私たちの要求は性に関することは自分たちが決める権利を持つべきだということ。合法化への議論や提案を今後も続けていく」と強調しました。(桑野白馬)