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2020年3月4日(水)

きょうの潮流

 予断と偏見に満ちた裁判でした。隔たれた塀の中で事実上の非公開。被告人以外は予防着や長靴、裁判官や検察官は手にゴム手袋をはめ、箸で証拠物をつまんだといいます▼およそ70年前。熊本県でハンセン病患者とされた男性が殺人罪に問われました。無実を訴えつづけながら再三の再審請求も通らず死刑に。国の誤った隔離政策が戦後もひきつがれ、それを司法が支えてきた「特別法廷」での審理でした▼ハンセン病療養所の菊池恵楓(けいふう)園で開かれたことから菊池事件と呼ばれます。最高裁が必要とした関連の隔離法廷は77年までに95件も。無知や無理解をただそうともせず、元患者の人権や尊厳を傷つけ、社会に偏見や差別をひろげました▼特別法廷は憲法に反する―。司法みずからが過去の不当な裁判を断罪する判決が先日、熊本地裁でありました。当時の科学的知見に照らし合理性がないと。元患者たちが求めてきた事件の再審請求は認めませんでしたが、今後の運動を進めるうえでも重要な判決になりました▼ハンセン病患者を強制隔離する「らい予防法」が廃止されたのは96年。01年には元患者に、昨年は家族に国が謝罪し補償法が定められました。いずれも違法性を認めた判決がきっかけでした▼病気にたいする無知や独断にもとづく国の愚行が、どれほどの罪をもたらすか。それは過去の話ではないでしょう。奪われたものをとりもどすために費やされる長い時間や労力。ハンセン病をめぐるたたかいが、それを教えてくれています。


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