2020年2月23日(日)
海洋発射核 7~10年内配備
米国防総省 22年度予算に計上へ
【ワシントン=池田晋】米国防総省高官は21日、トランプ政権が2018年2月公表の「核態勢の見直し」(NPR)で打ち出していた新たな海洋発射核巡航ミサイル(SLCM)の開発について、2022会計年度(21年10月~22年9月)予算に費用を盛り込む考えを表明し、配備までに「7~10年を要する」との見通しを示しました。SLCMは日本に寄港する米攻撃型原潜に搭載可能。日本への新たな核持ち込みの危険が高まります。
トランプ政権のNPRは、核軍縮を進めるとしたオバマ前政権の方針を転換し、低爆発力の核弾頭や新型核SLCMの開発によって、核戦力の強化・近代化を進める方針を示していました。
国防総省は今月4日、低爆発力の新たな小型核弾頭W76―2を潜水艦に実戦配備したことを公表したばかり。この日の同高官の表明は、NPRで打ち出したもう一つの重点であるSLCMの実現にトランプ政権が踏み出すことを示したものです。
米軍事専門紙「ディフェンス・ニュース」(電子版)によると同高官は、新型SLCM調達に向け省内で調査が進行中だと説明。「22会計年度の予算には開発に向けた予算が盛り込まれるものと期待している」と述べました。
解説
核持ち込み再開の危険
核兵器禁止、密約廃棄は急務
米国防総省高官は今後7~10年以内に、潜水艦や水上艦にSLCM(海上発射型核巡航ミサイル)を配備する考えを示しました。トランプ政権による核戦力大増強の一環で、「核兵器のない世界」を目指す世界の流れに対する重大な逆流です。さらに、日本への核持ち込みが再開される危険が現実のものになりつつあります。
日米両政府は1960年の日米安保条約改定に伴い、核兵器を搭載した米艦船・航空機の寄港・通過を容認する核密約を締結。以来、日本への核持ち込みが常態化してきました。
90年代に入り、米政府は核戦略を転換。水上艦や戦略原潜を除く原子力潜水艦から核兵器を撤去しました。さらに、「核兵器のない世界」を標ぼうしていたオバマ前政権は、海上発射型の核巡航ミサイル・トマホーク(TLAM―N)を退役させました。トランプ政権が配備を狙っているのは、核トマホークの後継にあたります。
重大なのは、2010年、民主党政権が日米核密約の存在を公に認めたものの、今日にいたるまで廃棄されていないことです。しかも、オバマ政権がトマホーク退役を決定した09年当時、世界で唯一の戦争被爆国でありながら、当時の自公政権がこれに異議を唱え、米国の「核の傘」に固執していたことが明らかになっています。
仮にSLCMを配備した場合、日本への寄港を繰り返している攻撃型原潜への搭載が想定されます。日本への核持ち込みの危険が再び迫っている下で、核密約の廃棄は急務です。同時に、核兵器禁止条約に署名する政府をつくり、「核の傘」からの脱却と、核兵器廃絶の流れをリードする政府をつくることが求められます。(竹下岳)