2020年1月31日(金)
主張
拡大する新型肺炎
封じ込めへ知恵と力を尽くせ
中国湖北省武漢市で発生した新型のコロナウイルスによる肺炎が世界的に広がり、深刻な影響が懸念されています。中国本土の感染者は既に2002年から03年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染者数約5300人を上回りました。日本をはじめアジア各国、米国、ヨーロッパ、中東でも感染者が確認されています。日本共産党は28日に対策本部を設置し、野党共同の対策本部も29日発足しました。超党派で知恵と力を合わせ、封じ込めのための取り組みを進めることが重要です。
正確な情報提供を迅速に
コロナウイルスには、人にまん延してかぜの原因になる4種類のウイルスと、動物由来で重症肺炎を引き起こすSARSとMERS(中東呼吸器症候群)の2種類が知られています。治療薬や感染予防用のワクチンはありません。
今回発見された新型は、重症化することのあるコロナウイルスだと考えられています。今のところ、致死率が10%近かったSARSほど重症化するものではないとも言われています。
日本ではこれまで、9人の患者と無症状の感染者2人が確認されました(30日午後5時現在)。患者には、武漢市から日本観光に訪れたツアー客を乗せたバスの運転手やガイド、日本政府が派遣した民間チャーター機で同市から帰国した日本人も含まれています。
日本政府は28日、新型コロナウイルスによる肺炎を感染症法に基づく「指定感染症」に指定することを閣議決定しました。入院勧告や就業制限を行えるようになり、入院に伴う医療費を公費で負担したりすることが可能になります。
現時点で、新型コロナウイルスの感染力は十分明らかではありません。厚生労働省は、日本でも人から人への感染が認められたものの、現時点では広く流行しているような状況ではないとして、季節性インフルエンザと同じように、せきエチケットや手洗いなどの基本的な感染症対策に努めるよう呼び掛けています。
日本での感染拡大を防ぐには、空港などでの水際の検疫体制を強化することが必要なのは言うまでもありません。
新型コロナウイルスの潜伏期間は平均で10~14日間とされています。潜伏期間中でも、他の人に感染する可能性も指摘されています。実際、症状のない人の感染も確認されています。水際だけで完全に防ぎ切ることは不可能です。国内の専門医療機関や保健所などの体制を緊急に確立・強化し、事態の進展に合わせて対策を見直していくことが大切です。
感染が疑われる人などが一般医療機関の受診を希望するケースが多数出てくることが想定されます。公的な相談窓口を拡充するとともに、一般医療機関に対する迅速で正確な情報提供や、国民への丁寧な説明が求められます。
打撃受ける産業の支援を
感染状況の調査や予防的な措置については、感染者が差別されず、人権が守られるように対応することも大切です。過度に行動の自由を奪う制限などがあってはなりません。
中国からの旅行客が激減し、北海道から沖縄まで各地で、観光産業を中心に大きな影響が出ています。打撃を受ける産業への経済支援も必要です。