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2020年1月23日(木)

鼓動

首相 政治利用の演説

五輪精神ふみにじる

 40分余の施政方針演説に東京五輪・パラリンピックの話題を何度も織り込み、「新しい時代」「夢」や「希望」をふりまいた安倍晋三首相。見過ごせないのは、東京五輪の開催と改憲を結び付けて語ったことです。

 首相は「オリンピック・パラリンピックを控え、未来への躍動感にあふれた今こそ実行のときです」と改憲を呼びかけました。

 演説は冒頭で、五輪・パラリンピックを契機に「国民一丸となって新しい時代に踏み出していこう」と、五輪と政治を一体的に盛り込む構成となっていました。

 しかし、五輪憲章にはこうあります。「スポーツと選手を政治的または商業的に不適切に利用することに反対する」

中立性投げすて

 日本共産党の志位和夫委員長が施政方針演説を「オリンピック・パラリンピックと憲法はまったく関係ない。こういう政治利用を許してはならない。五輪精神をけがすものだ」と批判したのは、この五輪憲章を踏まえたものです。

 一般紙も「五輪で結束 政治利用か」(「毎日」)、「(五輪と憲法は)同列に語られるべきものではない」(「朝日」)など、その点を指摘しています。

 五輪憲章を踏みにじる演説は、開催国の首相として、その資質が根本から問われるものです。

 そもそもスポーツや五輪は政治的中立性が強く求められます。

 それはスポーツが、どんな思想や政治信条を持つ人も一堂に会し、競い合うものだからです。五輪憲章は「政治的またはその他の意見…による、いかなる種類の差別」も禁じています。互いの政治的な立場を問わず、尊重することがスポーツの大事な原則です。

 開催国の首相として、これを踏まえるべき立場にありながら、国民には五輪と改憲を結びつけて迫る。これは五輪精神の破壊に等しいものです。

 しかも安倍首相は過去にも同様のことを繰り返してきました。

野望実現の道具

 17年の「共謀罪」法では「(成立しないと)五輪をできないと言っても過言ではない」とその強行を図り、同年には今回と同様に、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と東京五輪とセットで改憲を呼びかけています。

 五輪憲章を何度も踏みつける政治姿勢。東京大会を自身の政治的野望実現の“道具”としてしか見ていない姿勢が浮かび上がります。

 五輪が政治利用を許さないのは痛苦の歴史があるからです。かつてヒトラーが自己の人種差別政策を正当化し、また独裁政治を盤石のものとするため、ベルリン五輪(1936年)を政治的に利用しました。

 五輪を使って野心を実現しようとする姿は、こうした忌まわしい過去とだぶります。

 安倍首相の暴走を食い止め、五輪精神を踏まえた節度ある東京大会のために、国民的なたたかいが求められています。(和泉民郎)


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