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2020年1月15日(水)

ビキニ核実験被害今年のたたかい

行政・立法の対応急務

 米国が太平洋ビキニ環礁などで1954年に強行した水爆実験で被災した第五福竜丸以外の元マグロ漁船乗組員が原告となって政府の責任を問うビキニ国賠訴訟。原告らは上告せず、一審・二審判決の成果を生かして救済のたたかいに全力をあげることを昨年12月19日、記者会見で明らかにしました。二審までの成果と、ことしのたたかいの展望をみました。(阿部活士)


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(写真)新たなたたかいについて記者会見する原告団=昨年12月19日、高知市

 裁判は、ビキニ核実験被害者の救済という大きなテーマでは、前進面がありました。一審の高知地裁判決に続き、二審の高松高裁判決は、元漁船員らの被ばくの事実は認定し、救済の必要性に言及しました。

「未解決」と認める

 高松高裁判決は「本件被ばく者と原爆被害者との間には…共通性があり、本件核実験で使用された水爆の方が原子爆弾よりも遥(はる)かに強力で広範囲に放射性降下物の被害を発生させたことが判明しているのであるから、これらによる健康被害を等閑視することなく、その救済が同様に図られるべきという主張は理解でき、長年にわたって省みられることが少なかった漁船員の救済の必要性については改めて検討されるべきとも考えられる」としました。

 また、救済については「立法府及び行政府による一層の検討に期待するほかない」としています。

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(写真)高知県内で開かれている紙芝居「ビキニの海のねがい」の原画展

 ビキニ核実験被害者を支援してきた太平洋核被災支援センター事務局長の山下正寿さんは「一審、二審の裁判長もビキニ核実験被害は救済されていない『未解決』だということを認めたものです。提訴後、原告の元漁船員5人が死去した。ほかの原告も高齢化し体調不良を訴えている。ビキニ核実験被害者の救済は急務です。司法から2度にわたって救済を促された立法府と行政府の責任は重いと思います」と語ります。

船員保険新訴訟へ

 一方、元漁船員への船員保険の適用(労災認定)をめぐっては、本人と遺族11人が、2016年2月に全国健康保険協会に船員保険の適用を申請しましたが認められませんでした。厚生労働省の審査・再審査も昨年9月に棄却されました。

 この裁定を不服として、ことし3月をめどに、国賠訴訟の原告団長で亡くなった増本和馬さんの妻・美保さんら遺族と計13人が高知地裁に保険適用を求める訴訟を新たに起こします。

 「ビキニ核被災訴訟を支援する会」(仮称)が結成される予定で、「元船員の医療保障と健康の回復、名誉の回復、さらには豊かな漁場と自然を守ることを求めたい」と、全国的によびかけたいとしています。

禁止条約に照らし

 2017年に国連で採択された核兵器禁止条約は、「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)および核実験の被害者にもたらされた容認しがたい苦難と損害に留意し」としています。

 ビキニ国賠訴訟をたたかった元マグロ漁船員は、条約でいう「核実験の被害者」です。核保有大国は核実験大国でもあり、世界各地に「容認しがたい苦難と損害」を受けた「核実験の被害者」がいます。

 核兵器禁止条約は、核保有大国の圧力や妨害にもかかわらず、発効に必要な50カ国の半分をこえる34カ国(1月13日現在)が批准。発効は時間の問題となっています。

 条約として発効されれば、「核実験の被害者」への救済や補償が国際的な課題に浮上します。4月には、ニューヨークの国連本部で核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれます。核兵器禁止条約や「核実験の被害者」の救済についても問われます。

高知は健康相談も

 行政のとりくみでは、元漁船員らが大勢暮らす高知県が先行しています。

 ビキニ水爆実験に関連し、健康不安を抱いている高知県在住の元漁船員を対象にした地域の医師などによる健康相談(無料)を昨年12月から始めています。地理的・身体的事情から移動できない人には医師の自宅訪問もおこないます。担当する健康対策課では、2月末まで電話やメールで受け付けるとしています。

 また、地方議会で地方議員による高知県の条例や市の条例づくりを求める活動も活発になっています。


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