2020年1月12日(日)
きょうの潮流
波にさらされ茶色い根をむき出しにして傾くココヤシの木。何本かはすでに倒れてゴロゴロと波にもまれていました。太平洋の国マーシャル諸島の海岸です▼環礁が連なり、薄緑、青、濃紺と色を変えていく海。英国の作家スティーブンソンが太平洋に浮かぶ「真珠の首飾り」とたたえた国はいま消滅の危機に瀕(ひん)しています。気候変動が原因とみられる海面上昇の影響です▼「あの辺りまで陸地だったのに…」。住民の多くは国土が削り取られつつあることを日々感じています。東京の八王子市ぐらいの面積で人口約5万人の同国は温室効果ガスをほとんど排出していません。「なのになぜ私たちが被害を?」。住民の言葉には悔しさがにじみ出ます▼マーシャル諸島も手をこまねいているわけではありません。同国政府は気候変動の影響を特に受けるアジア、アフリカ、中南米の国々でつくるフォーラムを主導。国連会議では市民社会と協力して、パリ協定に背を向ける米国などに行動を迫っています▼マーシャル諸島の国会は昨年、気候危機を宣言。自国の野心的な削減目標を再確認し気候変動とのたたかいを今後も最優先課題とする決意を示しました。気候問題に取り組む若者への連帯も表明しています▼「温暖化を自らの問題と受け止めて行動して」。マーシャル諸島でよく耳にした排出大国への要望です。排出量世界5位にもかかわらず石炭火力発電に固執する安倍政権。この政権を退陣させ新しい政治を切り開くことはいよいよ急務です。