しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年12月27日(金)

圧力と便宜で企業動員

沖縄・高江ヘリパッド建設

首相補佐官「海外案件協力」

Jパワー内部文書

 沖縄県東村高江での米軍ヘリパッド建設をめぐって和泉洋人首相補佐官が2016年に、電源開発(Jパワー、本社東京)に協力を求め、見返りに「海外案件は何でも協力します」と持ちかけたことを記したJパワーの内部文書を、本紙は26日までに入手しました。


図

(写真)和泉首相補佐官から、米軍ヘリパッド建設への協力を求められたことを記したJパワーの内部文書

 米軍ヘリパッドは、米軍北部訓練場の一部返還と引き換えに同訓練場に6カ所を新設したもの。地元の自治会は2度にわたり反対を決議。住民が現地で座り込むなど強い反対運動が繰り広げられました。

 官邸が協力を求めたのは、ヘリパッド建設予定地に隣接するJパワー所有の「沖縄やんばる海水揚水発電所」(国頭村、16年7月19日付で廃止)の施設。

 Jパワーは沖縄をはじめ国内での水力・火力・原子力発電を運営するほか、海外で発電・コンサルタントなどの事業を展開しています。

 内部文書によれば和泉補佐官は、16年9月14日に北村雅良・Jパワー会長を首相官邸によび、「本件は、何とか年内、オバマ政権のうちにケリをつけたい」「反対派の活動もかなりのもので、あと3か月で完成させるには、JPから建屋、水、燃料タンク等の協力を得たい」と強調。そのうえで、「官邸で官房長官直結で私が仕切っており、一省庁の問題ではなく、国の問題」と、Jパワーに協力を要請したとあります。

 Jパワー側は当初、「地元に防衛省に協力していると認識されるのは避けたい、中立を守りたい」と断りました。官邸の要請をうけ北村会長は「国の強い要請と受け止めるし(中略)、社長に協力する方向で話す」と受諾。和泉補佐官は「ありがたい。(中略)海外案件は何でも協力しますから」と見返りを約束したとしています。

 Jパワーは本紙の取材に、沖縄防衛局から協力要請があり、「施設の一部分の使用を認めた」と認めました。他方、同局からの要請日時、それを受けての提供施設や首相官邸での和泉補佐官と北村会長との面談については「回答を差し控えたい」としました。

写真

(写真)建設中の米軍ヘリパッド。奥にあるのがJパワーの海水揚水発電所=2016年12月、沖縄県東村高 江(小型無人機から撮影)

利権で協力強要

 現地で抗議活動を続けていた伊佐真次・日本共産党東村議の話 当時、防衛局が電源開発の入り口に突然、ゲートを設置し、資材搬入用の車両を通行させました。民間企業の所有地でこんなことが行われてよいのかと強い疑問を感じたことがあります。海外案件での便宜という、いわば利権で協力を強要するやり方は国がやることではありません。

住民反対に官邸が強権姿勢

 Jパワーの内部文書は、住民の反対運動で米軍ヘリパッド建設が追い詰められたため、首相官邸が手段を選ばない“打開策”に出たことを生々しく記録しています。

 文書で和泉洋人首相補佐官は、ヘリパッド建設に反対しているのは活動家だけと断定していますが、東村高江区は2度にわたって反対決議を採択しています。

 政府は住民の反対を押し切って工事を強行しました。自衛隊の大型輸送ヘリを使って資機材を搬入し、全国から防衛局職員や警視庁機動隊などを大量に動員。「安全で静かな暮らしをしたい」という住民の意思表示を、「妨害行為」として暴力的に排除したのが実態でした。

 「本件は官邸で官房長官直結で私が仕切っており、一省庁の問題ではなく国の問題」という和泉補佐官の発言からは、露骨なまでのどう喝、強権的姿勢が透けて見えます。

 事実、「住民との対決は避けたい」とのJパワーの判断をねじ伏せて国への協力を強いています。その見返りとして「海外案件は何でも協力します」とあからさまな利益誘導までしています。

 官邸という密室でどう喝を平然とやってのけるのは安倍政権の常とう手段です。「沖縄県民によりそう」姿勢ではなく、アメリカとの約束を理由に何でもありという暴走の構図です。安倍首相は文書にかかれたやりとりの全容を国民に明らかにすべきです。(山本眞直)


pageup