2019年12月14日(土)
きょうの潮流
今世紀に入って最初の人権条約が誕生したのは、2006年12月13日でした。障害者権利条約です。第2次世界大戦後の国際的な人権保障を求める取り組みが土台です▼条約が約束するのは、「障害に基づくいかなる差別もなしに、すべての障害者のあらゆる人権及び基本的人権を完全に実現すること」。それは、特別な権利ではありません。障害者が、障害のない人と平等のラインに立つために必要なものです▼01年11月の国連総会でメキシコの大統領が条約の制定を提唱しました。日本は14年に批准。アメリカは09年にオバマ大統領(当時)が署名したものの、いまだ批准にいたっていません。国連加盟国193のうち現在、181の国・地域が批准しています▼条約制定に向けた国連の審議には障害者が参加。当事者ならではの気づきや発想を条約の中に織り込みました。「私たち抜きに私たちのことを決めないで」を合言葉に▼利潤第一主義の社会を、障害者含む人間中心に取り戻そうと条約は現代社会に警鐘を鳴らしている。平和を脅かす動きや強者の論理の抑止にも有効―。日本障害者協議会代表の藤井克徳さんは、そう評価します▼国連・障害者権利委員会は来秋、日本政府を審査する予定です。日本の障害者の人権と生活状況は、条約のめざすものから程遠い。制度や社会環境の整備をすすめようと、国内の障害者団体は幅広く結束。「市民社会」の一員として民間報告を国連に提出しています。障害者の尊厳と権利の保障を求めて。