2019年11月29日(金)
主張
税制改定の論議
大企業優遇やめ消費税減税を
10月1日の消費税率の10%引き上げ強行から2カ月近くたち、新たな消費不況に突入しつつあることが浮き彫りになっています。その中で安倍晋三政権は2019年度の補正予算案や「経済対策」の検討、20年度予算案の編成と合わせ、20年度税制改定の議論を始めました。自民党と公明党の税制調査会は先週それぞれの総会を開き、検討を本格化させました。企業に投資を促す税制改定が中心になります。文字通り大企業優遇税制の拡大です。国民が求めているのは大企業向けのばらまき推進ではなく、消費税を減税して庶民の負担を減らすことです。
税・財政のゆがみ拡大
消費税増税後の消費不況の深まりは、22日発表された政府の公式の景気判断である11月の月例経済報告でも、「景気は、輸出を中心に弱さが長引いている」「消費税率引上げ後の消費者マインドの動向に留意する必要がある」と警戒せざるを得ない状況です。耐久消費財や百貨店の売り上げは、10月になって軒並み減少しています。
検討が始まった、10兆円規模の19年度補正予算案など「経済対策」は、災害の復旧・復興だけでなく、大型の公共事業などが柱になるといいます。経済低迷の深まりなどで今年度の税収は当初の見通しを下回っており、大型の補正予算案のためには、3年ぶりの赤字国債の発行が必要との声も出ています。そのツケは結局、国民の負担です。加えて20年度の税制改定で、大企業の投資を促進する税制の拡大が中心になれば、財政や税制のゆがみは一層広がります。
自民党の甘利明税制調査会長は、先週の党税調総会の後、企業の内部留保を投資に「活用」するための税制の実現に重点を置くと発言しました。安倍政権の経済政策によって大企業の利益や内部留保が増えているのは明白な事実です。しかし、その活用を言うならまず働く人たちの賃金を引き上げることです。投資に「活用」させると言って、もっぱら大企業が利用する投資支援税制を拡充するというのでは、大もうけして内部留保をため込んだ大企業を、さらに応援することにしかなりません。
25日発表された政府の財政制度等審議会の建議は、消費税率の10%への引き上げは「一里塚」だと言って再増税まで示唆しました。
本来国民の血税で賄われる財政や税制の目的は、景気を調整するとともに、所得を再分配することです。庶民には消費税の増税を押し付ける一方、補正予算案では大企業本位の大型公共事業などに頼り、税制改定では大企業優遇税制を拡大するというのでは、大企業や大資産家と国民との格差は大きくなるばかりです。逆立ちした財政や税制を改めるべきです。
本来の在り方に立て直す
財政や税制を本来の在り方に立て直すには、大企業本位の予算や税制の拡大ではなく、国民の暮らしへの応援を最優先することです。なかでも安倍政権の下で8%、10%と引き上げられた消費税率を5%に戻すことが急務です。
国民の暮らし応援や消費税減税の財源は、大企業や大資産家に適切な負担を求め、大型開発や米国製兵器の“爆買い”をはじめ無駄な予算の削減などで十分可能です。消費税の廃止を目指しつつ、緊急に5%に減税することは日本経済を成長させる土台ともなります。