しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年11月28日(木)

主張

大学共通テスト

記述式も中止し根本見直しを

 2020年度からの大学入学共通テストでは、延期された英語民間試験の利用だけでなく、国語・数学に記述式を導入することにも厳しい批判が上がっています。

 記述式を導入する共通テストの中止を求めて高校生らがインターネットで4万2千人分の署名を集め、大学教員らの緊急声明には千人余の賛同が寄せられ、いずれも文部科学省に提出されました。日本共産党、立憲民主党・国民民主党などの共同会派は「記述式試験中止法案」を国会に提出しました。

世界でも例のない難題

 共通テストへの記述式の導入は、「思考力・判断力・表現力」の評価のためとされています。記述式答案は受験生のさまざまな思考や表現によって書かれるため、出題者の想定を超える答案もあり、そのたび採点基準を見直し採点をやり直す作業を余儀なくされます。多くの大学が個別入試で実施する記述式は、採点能力の高い教員を総動員して行われています。

 しかし、多くの大学関係者が指摘するように、50万人以上が受験する共通テストで、多様な記述答案を20日以内に公正に評価することは不可能です。東京大学の五神(ごのかみ)真総長は「過去に世界でも例のない難題」だとのべています。採点を請け負う学力評価研究機構(ベネッセの子会社)は、1万人の採点者を確保するといいますが、多くが学生などのアルバイトです。受験生から「公正な採点がされない」と不安の声があがるのは当然です。毎日新聞などが9~10月に実施したアンケートでは、高校の7割が「廃止が望ましい」と答えています。

 現行のセンター試験は選択式(マークシート)問題のため、受験生による自己採点が可能ですが、記述式ではこれが困難になることも問題です。大学入試センターが2回実施した試行テストでは、自己採点と採点結果が一致しなかった割合が約3割にのぼりました。1次試験の自己採点を踏まえて2次試験で出願する大学を決めるという、40年来続けられてきた「システム」が壊れてしまいます。

 なにより採点業務を民間に委託すること自体、入試のもつ信頼性を損なう大問題です。大学入試センターが採点マニュアル作成のため学力評価研究機構に試験問題を事前に見せることが明らかになりました。文科省は守秘義務を課すといいますが、民間契約上の義務にすぎず、試験問題漏えいを防ぐ十分な保障とはいえません。共通テストの採点業務でえたノウハウが、ベネッセの営業に利用される問題もおこります。ベネッセが共通テストの試行調査に関与した事実を、高校関係者向け資料に記載していたことまで発覚しました。

決定過程の疑念深まる

 英語の民間試験利用も記述式採点の民間委託も、文科省が17年7月に方針決定した過程の不透明さが国会で問題になっています。

 下村博文元文科相が昨年4月、自民党の教育再生実行本部の会議で、東京大学に英語民間試験を利用させるよう文科省に求めるとともに、同席していた教育界の代表者に憲法改定への協力を要請したことが明らかになりました。

 入試改革の決定過程に自民党の介入がなかったのかも含め、徹底解明が不可欠です。記述式導入も中止し、今回の入試改革を根本から見直すことを強く求めます。


pageup