しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年11月23日(土)

経団連 相次ぐ構造改革提言

 経団連が産業構造に関する提言を相次いで発表しています。大企業をめぐる経済環境の変化に合わせて、デジタルデータ活用から社会保障制度の改編まで幅広い対応を政府に求めています。(金子豊弘、杉本恒如)

デジタル データ活用 雇用破壊加速

写真

(写真)家電見本市シーテックで第5世代移動通信システム「5G」を利用して街頭や防犯カメラなどを接続する街づくりを提案するNECの展示=10月14日、千葉・幕張メッセ

 経団連は6日、東京・大手町の経団連会館でデジタルトランスフォーメーション(DX=社会のデジタル化)会議の初会合を開催しました。この会議は、デジタル化に伴う横断的な課題を議論することを目的としたもの。冒頭、議長を務める中西宏明経団連会長は「いかに日本の競争力を強化し経済成長に結びつけるのかを議論していきたい。アウトプットとしては、単に規制緩和を要望するだけではなく、新たな産業構造をつくっていくことが目標」と発言。急速に進む経済のデジタル化への対応を急ぐ必要性を語りました。

 個人データの活用について10月15日に発表した提言では、「企業が必要なデータを収集できる環境整備が欠かせない」と強調。▽公共データのオープン化▽データ連携基盤の構築▽情報銀行の推進―などの課題を列挙し、官民一体で推進することを提起しました。

 今月13日の経済構造改革に関する提言では、DXを推進し、「世界をリードする活力を取り戻す」ことをうたっています。

 デジタル経済化にともなって、巨大IT(情報技術)による人権侵害やプラットフォーマー(基盤提供企業)による優越的地位の乱用などの課題が噴出しています。しかし、経団連としては、企業利益の追求の立場から、「阻害する制度などについては、果敢に見直し」を求め、「新技術・データを活用した新たなビジネスの創出を促進し、経済活力が競争力強化を実現」するとしています。

 デジタル化が進むことによって、従来の雇用形態も変容。インターネットを通じて単発の仕事を受注する「ギグエコノミー」も広がり、雇用の不安定化が広がっています。構造改革を求める経団連提言は、「従来のメンバーシップ型雇用に加えて、ジョブ型雇用のさらなる活用」をうたっています。これでは、財界・大企業による雇用破壊が加速してしまいます。

社会保障 給付抑制狙い負担増やす

 経済構造改革に関する提言では社会保障制度「改革」についても財界の考え方を示しました。

 2022年に団塊世代が75歳以上になり給付費がさらに増える一方、25年以降には生産年齢人口(15~64歳)が急減して費用の負担者が減少すると指摘。社会保障制度、とりわけ医療・介護の「持続可能性」を確保するために「改革」が必要だと述べています。

 「改革」の視点として示しているのは、(1)「世代間の公平性」を口実に高齢者の負担を増やす(2)「真に必要な給付への重点化」を口実に医療・介護の給付範囲を切り縮める(3)「効率化」を口実に病院を再編統合し病床を削減する―という、徹底した制度改悪の方向です。

 「特に優先して実現すべき事項」として(1)75歳以上の患者負担を原則1割から2割に引き上げる(2)受診時に従来の窓口負担に加え一定額の追加負担を求める(3)市販品類似薬の負担を増やす(4)介護保険で利用者負担が2割となる人を増やす―の4点をあげています。

 自己負担を引き上げ、医療・介護を利用しづらくして給付を抑制するねらいです。これでは国民の健康で文化的な生活が持続不可能になります。

 社会保障の「安定財源」を口実に、消費税率を10%以上に引き上げることも「有力な選択肢の一つ」だと強調しています。


 メンバーシップ型・ジョブ型雇用 経団連はメンバーシップ型雇用を▽新卒一括採用▽長期・終身雇用を前提とした社内人材育成▽年功型賃金を主な特徴とする雇用システムとしています。ジョブ型は、仕事(ジョブ)の内容や役割、責任などに区分けし、それに合わせた処遇を定め、社内外から人材を集める雇用システムです。


pageup