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2019年11月7日(木)

第8回中央委員会総会

綱領一部改定案 志位委員長の結語

 日本共産党第8回中央委員会総会で5日承認された志位和夫委員長の綱領一部改定案の討論の結語は次のとおりです。


写真

(写真)綱領一部改定案についての結語をのべる志位和夫委員長=5日、党本部

 みなさん、2日間の会議、お疲れさまでした。

 総会では46人の同志が発言しました。全国での党内通信の接続数は1536カ所、視聴者は1万918人、インターネット視聴者と合計で3万1049人となりました。全国から1037通の感想が寄せられました。

 それぞれの議案について、それぞれの提案者が結語を行いますが、私は、幹部会を代表して、綱領一部改定案についての結語を行います。

一部改定案に対する修正提案と質問について

 綱領一部改定案は、討論でも全国からの感想でも、強い歓迎をもって受け止められています。一部改定案は、多くの論点に及ぶものですが、その全体に対して、積極的な感想が寄せられています。

 まず、一部改定案に対する修正提案と質問についてお答えします。修正提案を受けた修正箇所は、文書でお配りしたとおりであります。いくつかの字句上の修正、用語の統一を行いました。

「弱い立場にある人びと」という表現は削除した

 内容にかかわる修正は、第九節、国際的な人権保障の発展について述べたパラグラフに、「先住民など」を補足するとともに、「その他の弱い立場にある人びと」という表現を削除したことです。原案の「弱い立場にある人びと」という言葉は、国連が使用している「脆弱(ぜいじゃく)な立場にある人びと」という包括的な規定をふまえたものですが、「弱い立場といわれると、抵抗、違和感を覚える」という意見が出されました。原案は、女性など、ここであげている人びとを「弱い人びと」といっているのではなく、“弱い立場に置かれてきた人びと”という意味で使いましたが、「弱い」という言葉自体に違和感があるという意見です。そこで、「弱い立場にある人びと」という表現は削除することにしました。削除しても、この部分の文意は十分に伝わると思います。違和感を与える言葉は、綱領に残すべきではないと判断しました。

「市民社会」という用語について

 一部改定案では、「市民社会」という用語を使っていますが、これを「市民の運動」などに修正したらどうかという提案がありました。

 「市民社会」(シビル・ソサエティ)という用語は、国連など国際社会ですでに定着している用語で、国連の諸活動に自発的にかかわる個人と団体を包括した概念として使われています。核兵器禁止条約の前文にも明記されたように、さまざまな分野の専門家、宗教指導者、国会議員などを含んでいます。私たちも核兵器禁止条約の国連会議に参加しましたが、国会議員として、「市民社会」の一員にかぞえられて、条約に明記されているわけであります。このように「市民社会」とは、「市民の運動」より、より広い意味をもつ用語であり、原案のままにしたいと思います。

提案報告が述べている中国の変化はなぜ起こったか

 文書で出されたいくつかの質問にお答えします。

 複数の同志から、「提案報告が述べている中国の変化は、なぜ起こったのか、それはいつごろで、何をきっかけにしたものだったのか」という趣旨の質問が寄せられました。

 なかなか難しい質問でありますが、お答えできる範囲で述べておきたいと思います。

 「いつごろ」からかという質問に対しては、中国の国際政治における動向に問題点があらわれてきたのは、2008年から2009年ごろ、胡錦濤政権の最後の時期から習近平政権が始まる時期だと認識しています。中国が、国際舞台で、核兵器廃絶を「究極的目標」と棚上げする姿勢を示したのは、2009年のことでした。東シナ海で、尖閣諸島の領海に初めて公船を侵入させる行為をとったのは、2008年のことでした。南シナ海のほぼ全域について自国の権利を公式に主張するようになったのは、2009年でした。

 その背景にあるのは、ちょうどこの時期に、中国がGDP(国内総生産)で日本を追い越し、世界第2の「経済大国」になったという問題があると思います。経済的に力をつけるもとで、中国指導部には、より謙虚で誠実な対応が求められましたが、そうした対応が行われず、「大国主義・覇権主義」の誤りがあらわれてきた、これが背景にあると考えます。

 より根本的な問題として、中国のおかれた歴史的条件を指摘しなくてはなりません。中国革命は、文字通り遅れた国から始まりました。とくに、自由と民主主義の諸制度が存在しないもとで、革命戦争という議会的でない道で革命が起こったこと、革命後もソ連式の「一党制」が導入されるとともに、自由と民主主義を発展させる課題が位置づけられなかったことは、中国社会の民主的発展の大きな障害となりました。

 いま一つ、より根底にある歴史的条件は、中国社会に大国主義の歴史があるということです。近代以前、中国は、東アジアの超大国として、周辺の諸民族と朝貢関係を結び、従属下においてきた歴史をもっています。こういう歴史をもつ国として、革命後も、大国主義・覇権主義は、毛沢東時代の「文化大革命」の時期に、日本共産党への乱暴な干渉攻撃をはじめ、さまざまな形であらわれました。

 そして、そういう歴史をもつ国だけに、大国主義・覇権主義に陥らないようにするためには、指導勢力が強い自制と理性を発揮することが不可欠となります。日中両党関係が正常化された1998年から数年間の時期には、わが党に対する干渉への「真剣な総括と是正」を公式に表明するなど、間違いなくそうした自制と理性が発揮されました。しかしそれは一時的なものとして終わりました。

 その根本的な背景には、中国の置かれたこうした歴史的条件があったと考えるものです。

平和の地域協力の流れにアフリカを含んでいないのはなぜか

 文書で出された質問のなかに、「平和の地域協力の流れにアフリカを含んでいないのはなぜか」というものがありました。

 アフリカには、この大陸の55のすべての国ぐにが加盟する組織として、アフリカ連合(AU)が存在しています。この大陸の国ぐには、アフリカ非核地帯条約を2009年に発効させるなど、核兵器廃絶で積極的役割を果たしています。日本共産党は、アフリカの国ぐにとも、この問題で、国連などの会議で、おおいに協力の関係をつくってきました。

 ただ、内政不干渉の原則が守られず、ブルンジ、ルワンダ、スーダンの紛争・内戦にあたっては、AUとして軍事介入を行うなど、紛争の平和的解決という点では、さまざまな問題が残されています。そうした点を考慮して、綱領では、アフリカを、平和の地域協力が進んでいる地域にはあげていません。

 同時に、アフリカ大陸で進んだ植民地支配からの解放は、世界史の偉大な発展の重要な構成部分となっており、私たちはこの大陸の国ぐにの今後の発展を期待を持って注視していきたいと思います。

一部改定案を、今の日本のたたかいを前進させる生きた力に

 さて、討論を踏まえて、私が強調したいのは、一部改定案は、国際情勢を中心とした改定案ですが、それは決して「遠い外国の話」ではなく、今の日本のたたかいを前進させる生きた力にしてほしいし、必ず生きた力にすることができる――このことが討論で浮き彫りになったということです。この点が、たいへんに大切な点だと思います。討論を踏まえて、四つの点を、私は指摘したいと思います。

世界の大局的な流れをつかむことは、日本のたたかいを確信をもってすすめる土台

 第一に、世界の大局的な流れをつかむことが、日本のたたかいを確信をもってすすめるうえでも不可欠の土台になるということです。

 討論のなかで、「毎日のニュースを見ると、世界で起こっていることは暗い話ばかりだが、一部改定案を読んで明るい展望が見えた」という発言がありました。全国からの感想でも、同様の声がたくさん寄せられました。

 たしかに世界は、その時々の断面だけを見ますと、暗い、恐ろしい出来事の連続のようにも見えます。しかし大きな歴史的スケールで見ますと、さまざまな曲折や逆行を経ながらも、着実な進歩の歩みを刻んでいます。

 20世紀はまさにそうした世紀でした。この世紀は時々の断面だけを見れば、戦争と抑圧の連続であり、こんなにも多くの人々が暴力の犠牲になった世紀はなかったと言っても過言ではないでしょう。しかし百年という単位で見ますと、この世紀に、人類は巨大な進歩を記録しました。それは綱領第七節が述べているとおりであります。

 そして21世紀も、時々の断面だけで見れば、戦争があり、テロがあり、暗いニュースが連続しているようにも見えます。しかし、この世紀が始まって、およそ20年近くという単位で見ますと、一部改定案が述べているように、核兵器廃絶、平和の地域協力、国際的な人権保障などの前進の姿がはっきりあらわれてきました。

 一部改定案には、こうした世界史の大局的な見方がつらぬかれています。提案報告でも述べたように、その根本的立場は、20世紀に進行した人類史の巨大な変化の分析に立って、21世紀の世界の発展的展望をとらえるというところにあります。この立場は2004年に行った綱領改定の根本的立場でしたが、一部改定案はこの根本的立場を徹底的におしすすめるものとなったと思います。

 そして強調したいのは、20世紀においても、21世紀においても、こうした人類史の進歩の原動力となったのは、各国の人民のたたかいだということです。綱領の世界論は、「人民のたたかいが歴史をつくる」という科学的社会主義の立場、史的唯物論の立場に立脚したものであり、これをしっかりつかむことは今日の日本のたたかいを確信をもってすすめるうえで、大きな力になることは間違いないと考えるものです。

日本のたたかいと世界のたたかいは、直接に結びついている

 第二に、日本のたたかいと世界のたたかいは、「グローバル化」のもとで、直接に結びついているということです。とくにインターネット、SNSの発達のもとで、それはいっそう顕著になっています。世界のどこで起こった出来事も、瞬時のうちに世界全体に伝わり、さまざまな影響を及ぼしあいます。

 一部改定案で述べられている、「核兵器のない世界」をめざすたたかい、国際的な人権保障の豊かな発展をめざすたたかい、ジェンダー平等を求めるたたかい、貧富の格差の是正を求めるたたかい、気候変動を抑制するたたかいなどは、どれも世界の大問題であるとともに、日本国民にとっても強い関心が寄せられている切実な大問題であり、たたかいが起こっている問題です。これらの問題で、世界の動きは、日本の世論と運動にただちに影響を与え、相互に深く関連しあっています。

 一部改定案は、これらの諸問題を、21世紀の世界の大局的な流れ、世界資本主義の諸矛盾のなかに大きく位置づけ、その解決の展望を明らかにしています。そしてこれらの諸課題で、国際連帯を強めることを呼びかけています。

 一部改定案は、世界的規模で解決が求められているさまざまな諸問題について、関心と模索を強め、真剣に解決を求めている日本国民の思いにこたえ、日本のたたかいを世界的な流れのなかに位置づけて発展させるうえで、大きな力になると確信するものです。

中国にかかわる綱領改定の意義――世界の平和と進歩にとって大義あるとりくみ

 第三は、一部改定案が、中国の国際政治における問題点について、事実と道理にそくして踏み込んで明らかにしたうえで、「社会主義をめざす新しい探究が開始」された国と判断する根拠はもはやなくなったという判断のもとに、この部分の綱領からの削除を提案している意義についてであります。

 多くの同志が発言で、この改定は、中国にかかわっての日本共産党に対する誤解、偏見をとりのぞく大きな力になると述べました。日本共産党を、中国共産党・中国政府と同一視した攻撃が広く行われています。それだけでなく、中国政府による大国主義的、覇権主義的な行動、人権侵害に対して、日本国民のなかで当然の批判や危惧が広がり、そこから生まれる社会主義に対する「マイナスイメージ」が日本共産党の前進の障害になっていることも事実であります。一部改定案がこれらの誤解、偏見を解きほぐし、日本共産党の魅力を広げていくうえで、大きな力を発揮することは間違いありません。

 同時に、私が強調したいのは、わが党が今、中国の国際政治における問題点を正面から批判しているのは、日本国民の誤解、偏見を解くという次元にとどまらず、世界の平和と進歩にとって大義があるとりくみだと考えているからであります。

 中国に今あらわれている、新しい大国主義・覇権主義、人権侵害は深刻なものですが、世界を見ましても、それに対して冷静に、事実と道理にそくして、正面から批判する動きが率直に言って弱いという現状があります。

 安倍政権も、中国のあれこれの動向を、自分の政権の軍事力拡大に利用することはしても、たとえば尖閣諸島問題一つとっても、中国の覇権主義的行動の問題点を正面から提起し批判するという姿勢が弱い。香港で起こっている人権侵害についてもまともな批判をしない。そういう状況が続いています。

 こういう状況のもとで、日本共産党が事実と道理にもとづいた批判を行っていることは、私は、中国の大国主義・覇権主義の行動に対する痛手となっていると考えます。だからこそ提案報告で明らかにしたように、中国共産党は、3年前、日本共産党第27回大会を前にして、大会決議案に明記されていた「新しい覇権主義・大国主義」という記述の削除を求めたのであります。痛手になっているからこそ、削除を求めたのです。

 日本共産党が、いま中国が行っている誤った行動を批判することは、そうした意味で、世界の平和と進歩を進めるうえでの大義あるとりくみだということを強調したいし、自主独立を貫いてきた党として、そうした国際的責任を果たしていきたいという決意を申し上げたいと思います。

今の私たちのたたかいは、そのすべてが未来社会を根本的に準備する

 第四は、一部改定案が、「発達した資本主義国における社会変革は、社会主義・共産主義への大道である」という命題を押し出したことの意味についてであります。

 これは、私たちが、一つの世界史的な「割り切り」をしたということであります。

 提案報告でも述べたように、わが党は、資本主義の発展の遅れた国ぐににおける社会主義的変革の可能性を否定するものでは決してありません。そのような断定は、図式的で傲慢(ごうまん)なものとなるでありましょう。

 同時に、ロシア革命から1世紀をへた世界史的経験は、資本主義の発展が遅れた国ぐににおける社会主義的変革には、きわめて大きな困難があることを証明しました。そうしたもとで、発達した資本主義国で社会主義・共産主義への道を開くという人類未到のとりくみに、腹をくくって挑戦しよう――これが一部改定案の立場であります。

 一部改定案では、発達した資本主義国での社会主義的変革の「特別の困難性」とともに、「豊かで壮大な可能性」を全面的に明らかにしています。私が、結語で強調したいのは、今の私たちのたたかいが、「特別の困難性」を突破するとともに、「豊かで壮大な可能性」を準備するたたかいであるということです。

 いま全党がとりくんでいる「党勢拡大大運動」のとりくみは、社会変革の主体的条件を根本的に強め、「特別の困難性」を突破して、日本における社会進歩を進める最大・最良の保障を築くたたかいにほかなりません。

 また、労働時間短縮をはじめ「ルールある経済社会」をめざすたたかい、人権の豊かな発展をかちとり、すべての個人が尊厳をもって生きることのできる社会をめざすたたかいは、未来社会にすすむ諸要素を豊かにするたたかいであり、これらのたたかいは未来社会へと地続きでつながっています。

 今の私たちのたたかいは、そのすべてが未来社会を根本的に準備する――こういう大きな大志とロマンのなかに現在のたたかいを位置づけ、日本共産党の大きな躍進をかちとろうではありませんか。

 わけても、一部改定案を「大運動」成功の政治的・理論的推進力にしていただくことを心から訴えまして、討論の結語といたします。


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