2019年11月5日(火)
東海再処理施設 高レベル放射性廃液処理中断
「実用技術の検証甘すぎた」との指摘
廃止措置中の日本原子力研究開発機構の東海再処理施設(茨城県東海村)で高レベル放射性廃液のガラス固化が7月から3カ月以上停止したままです。計画では2028年度までに処理を終えるとしていますが、計画に影響の恐れがあるといいます。
東海再処理施設には、高レベル放射性廃液(約400立方メートル)が液体のまま長期間放置されています。原子力規制委員会は、新規制基準の適合性を保留して廃液が流出しないようガラス固化を進めるよう指示。機構は、16年から、ガラス固化を開始しましたが、トラブルの多発で中断を繰り返しています。
機構は、7月8日から約2年ぶりにガラス固化を再開したばかりでした。計画では11月中旬までに50本のガラス固化体を製造する予定でした。8本目の製造途中、溶融炉の下に取り付けられているノズルからガラス固化体容器への流入が停止。このため同月29日、溶融炉の電源を停止しました。
機構は、先月開かれた規制委の監視チームの会合で、流入停止は、ノズルとその周りにある加熱コイルが接触し、漏電したためと説明。接触は、ノズルが傾いたことが原因と推定しています。
一方、機構が対策として考えているのは、▽コイルを含む装置を傾いたノズルに合わせて調整、新調する▽23年に予定されていた新たな溶融炉の投入―など。いずれも大幅に時間がかかる見通しです。
また、新たな溶融炉を投入する場合、既設の溶融炉内に高レベル放射性廃液を含むガラス780キログラムがあり、このガラスの抜き取りが必要です。
機構は本年中に対策の方向性を示したいとしています。
機構の山本徳洋理事は「これまで試験などを通して初めての経験」と発言。「現行のガラス固化計画に影響が生じる可能性」があるとしました。
16年の再開後だけで、ガラス固化体を扱うクレーンの不具合や溶融炉の底に金属(白金族元素)が想定より早くたまるなどの理由で、予定外の停止を繰り返しています。
東海再処理施設のガラス固化技術は、機構の独自技術とされ、日本原燃の六ケ所再処理工場(青森県六ケ所村)にも技術移転されています。
元日本原子力研究開発機構職員の花島進日本共産党那珂市議は「東海再処理のガラス固化技術は、完成した技術とされながらも、これまでもトラブルを繰り返してきました。実用技術としての検証が甘すぎたのは明らかです。ガラス固化は高レベルの放射能を扱うために、問題があっても止めて直すことが大変に困難です。全体に技術を見直す必要があるのでは」と指摘しています。
(松沼環)
高レベル廃液ガラス固化 使用済み核燃料の再処理で出る極めて高い放射能を含む廃液を、ガラスに混ぜ溶かし、ステンレス容器などに充てん、固化したもの。10万年程度の保管が必要とされています。日本では最終的な処分場は決まっていません。