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2019年11月4日(月)

主張

英語民間試験延期

入試改革の抜本的な見直しを

 経済的・地域的格差を広げ、入試の公平さを損なうと批判を浴びていた大学入学共通テストでの英語民間試験の利用を、萩生田光一文部科学相が2024年度まで延期すると表明しました。多くの高校生、受験生や市民が粘り強く声を上げ、野党の結束した共闘で政治を動かした大きな成果です。

手直しでは欠陥解決せず

 萩生田文科相は、「安心して受験に臨める制度」となるよう1年かけて検討するといいます。しかし、この制度の欠陥は手直しで解決するものではなく、民間試験の利用をきっぱり断念するしかありません。そもそも教育の機会均等を否定する「身の丈」発言を平気で行い、文科相としての資格がない萩生田氏は、即刻辞任すべきです。

 大学入試で民間試験を利用する制度は、1回の受験で約6千~2万5千円という新たな受験料負担を最大2回まで受験生に課すものです。それ以外にも民間試験を何度も受けたものほど好成績をえられ、入試で有利となります。家庭の経済力で格差がつき、教育の機会均等に反するものであることを、「身の丈」発言によって文科相がみずから事実上認めました。

 入試の公正性を損なう重大な欠陥を持つことも、先月30日の衆院文科委員会での日本共産党の畑野君枝議員の追及で浮き彫りになりました。英検やGTECなど民間事業者が行う七つの試験は、それぞれ試験の目的も難易度も異なり、採点の基準や採点者の資格さえもバラバラで事業者任せです。これに文科省は何も対応できないことが明らかになりました。

 文科省がこの制度を打ち出したのは、17年7月に発表した「大学入学共通テスト実施方針」です。この方針を検討したのは文科省が16年につくった「検討・作業グループ」ですが、同省は議事録を公表しようとしません。畑野議員が「新制度の検討・決定過程を明らかにせず実施することは許されない」とただしたのに対し、文科相は「(答弁を)持ち帰らせてほしい」としか答えませんでした。

 大学入試は、高校生にとって自らの進路を大きく左右する制度であり、すべての人に公平・公正が保障されなければなりません。機会の均等や試験の公正性が損なわれ、文科省の検討過程さえも闇の中という英語民間試験利用の制度に正当性はありません。

 萩生田文科相は、英語民間試験利用は延期するが、国語・数学の記述式導入は予定どおり21年度入試から実施すると述べました。しかし、国語・数学の記述式導入も、採点を民間事業者に丸投げする点では英語民間試験と共通する欠陥をもっています。

開かれた場の議論こそ

 記述式試験を共通テストに導入すれば、五十数万人の記述答案を20日以内に採点しなければならず、文科省は1万人の採点者が必要だとしています。採点作業をベネッセに約61億円で委託し、学生アルバイトも認めるという方針ですが、これでは採点の質と公正性が保障されません。記述式問題は、多くの大学が個別試験で実施しています。共通テストに導入する必要性も妥当性もありません。

 今回の入試改革は抜本的な見直しを行うことが不可欠です。教育現場や専門家も参加した開かれた場での議論を行い、根本から再検討すべきです。


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