2019年10月30日(水)
台風19号 鉄路寸断
長野 千曲川 鉄橋崩落の上田電鉄
再開見通せず 通勤・通学に影響
東日本の各地を襲った台風19号や記録的豪雨は、関東・甲信越・東北の鉄道路線に甚大な被害をもたらしました。国土交通省の発表によると、運休が続くJR東日本と私鉄の14路線のうち8路線では運転再開のめどがたっていません。通勤・通学や観光などに大きな影響を与えています。(丹田智之)
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長野県上田市の上田電鉄別所線(上田―別所温泉間、全線11・6キロ)も、その一つです。台風19号で千曲川の鉄橋が崩落しました。現場では決壊寸前になった堤防の応急復旧工事が進められています。
同線は被災により上田―下之郷間(6・1キロ)で運休となり、バスによる代行輸送が続いています。
平日の朝、下之郷駅前には69人乗りのバス3台が待機していました。列車を降りた高校生やスーツ姿の会社員などが足早に乗り込み、ぎゅうぎゅう詰めの状態で出発しました。
この日は雨で、途中で渋滞も発生。各停留所にもバスを待つ人々の列ができ、上田駅前に着く頃には30分ほどの遅れが生じました。バスを降りた高校生は「もう1時間目の授業には間に合わない」と困った様子でした。
県立高校2年の女子生徒は「夕方の代行バスも満員の状態だったので、乗るのをやめた友人もいました。車酔いもするので、長い時間の乗車は体力的にきつい」と疲れた表情で語りました。
会社員の男性(25)は「電車とバスの乗り継ぎ時間も含めて1時間かかります。普段の2倍の通勤時間です。電車だとほとんど遅れることはないので、早く復旧してほしい」と話しました。
上田電鉄の矢澤勉運輸課長は「崩落しなかった部分の橋脚にも傾きが生じ、堤防の復旧も含めて全線の再開には数年かかる見通しです。自社だけでの復旧は難しいので、国や自治体の協力も求めていきたい」としています。
同社では、被災区間を除いた城下―下之郷間の運転再開を検討しています。
日本共産党の渡辺正博市議は「上田電鉄には市も出資しています。市民の足として引き続き路線を維持できるように、一日も早い復旧に全力を尽くしていきたい」と述べています。
箱根 観光最盛期 客足3―4割
運休でも営業 続く努力
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強い勢力で伊豆半島に上陸した台風19号は、日本有数の観光地・箱根(神奈川県箱根町)を直撃。降り始めからの総雨量1000ミリを記録し、土砂災害が相次いで発生しました。毎年2千万人が訪れる同地に観光客を輸送する箱根登山鉄道も山岳区間(箱根湯本―強羅間、8・9キロ)で20カ所以上の被害が確認されています。
開店休業
被害が大きい宮ノ下―小涌谷間では、土砂崩れにより23メートルにわたって路盤が崩壊しました。同社総務部の鎌田隆一課長は「のり面の崩壊や岩石の流入、路盤の流出などが7カ所あり、これから復旧作業に向けた地質調査を行う段階です。重機が入れない場所もあります。運転再開まで1年かかるか2年かかるか、それさえも今の段階では見通せない」と被害の深刻さを訴えます。
運休が続く箱根湯本―強羅間では毎時2~3本、バスによる代行輸送が行われていますが、鉄道の輸送力とは大差があります。
箱根は紅葉シーズンを迎える10~11月が観光の最盛期です。ところが、例年は大勢の観光客でにぎわう強羅の商店街はいま、人影もまばらです。
強羅駅前で土産物店を営む女性(73)は「1日に数千円の売り上げしかなく、開店休業の状態です。登山鉄道の運休は死活問題です。店を閉めたら食べていけない」と不安げな様子で語りました。
復旧早く
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箱根強羅観光協会の中村雅昭副会長(63)は「箱根山の噴火警戒レベルが引き下げられ、大涌谷周辺の立ち入り規制の解除に見通しがたった矢先でした。客足は平常時の3~4割です。登山鉄道の復旧まで1年、2年となれば従業員を雇えなくなり、廃業を考える人も出てくるかもしれない」と心配しています。
温泉旅館を経営する男性(41)は「外国人客の大半、日本人客の半数が登山鉄道を利用します。『電車がないと行けない』と予約をキャンセルする人もいます。一日も早く復旧してほしい」といいます。
中村さんは「鉄道の運休が続く中でも観光施設は平常通りに営業しています。安心して箱根に来てほしい」と呼びかけています。
日本共産党の山田和江町議は「箱根町の経済は観光で成り立っています。総力をあげて登山鉄道の早期復旧に取り組むよう、国や県に要請したい」と述べています。
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