2019年10月28日(月)
主張
教員の変形労働制
教育に大きな弊害 導入許すな
安倍晋三政権が、公立学校の教員に「1年単位の変形労働時間制」を導入する法案を国会に提出したことに批判が広がっています。
「1年単位の変形労働時間制」は、繁忙期に1日10時間労働まで認め、閑散期に労働時間を減らし平均して1日あたり8時間に収めるという制度です。“寝だめ”ができないことに象徴される人間の生理を無視した働かせ方です。
長時間労働を固定・助長
政府の導入の口実は、「授業がある日は長く働いているのだから繁忙期として労働時間を延長し、その分、夏に休みがまとめてとれるようにする」というものです。
しかし、これは教育現場の実態からかけ離れた空論です。
学校は業務であふれかえっています。それでも退勤定時が歯止めになっています。それをめどに会議や打ち合わせを終わらせ、そこから各自の授業準備などの時間となります。退勤定時が1時間、2時間後にずれたら、会議などがその時間帯に設定され、帰りが遅くなることは目に見えています。
「働き方改革と言うのに、なぜ退勤時間を遅くするのか」「夏が来る前に、体をこわす先生が続出する」という指摘はもっともです。子育てや介護との両立についても、連合の調査で6割の教員が「困る」と答えています。
「夏の休み」確保という唯一の理由も成り立ちません。教員は、子どもが夏休みの間も、行政研修や部活動指導などの業務が続き、閑散期どころか年休もとれないほどです。変形労働で「休み」が設定されても、休日返上で働くことになります。「夏の休み」は、行政研修などの業務を削減して休みがとれる環境をつくり、たまった代休や年休をとれるようにすれば、きちんと保障できます。
考えなければならないことは、教員の労働条件の悪化が、子どもの教育に何をもたらすかです。
教員たちは「過労死ライン」とされる月80時間以上の時間外労働をしながら、授業準備が十分にできず、困難を抱える子どもが増える中で、子どもに向き合う時間がとれないことに悩んでいます。
国民と教員たちが求めているのは、こうした状態を解決し、教員が元気に、心に余裕をもって、子どもの教育にあたれるようになることです。しかし、「1年単位の変形労働時間制」では、教員が元気になるどころか、長時間労働が固定化・助長されます。業務が増える一方の学校現場で、手間のかからない型通りの授業や子どもを力で押さえつける傾向を後押ししかねません。子どもたちの成長・発達のかかった切実な問題です。
徹底審議の上で廃案に
問題の解決には、国などが学校に課している不要不急の業務をなくし、教職員を増やす以外にありません。残業代ゼロの抜本改善も必要です。それらに背を向け、変形労働時間制をもちだした国に失望と怒りが広がっています。
制度撤回を求めるネット署名には「こんな制度をいれられたら、仕事が続けられない」など若い教員たちの書き込みが多数あります。市区町村教育長アンケートでは導入賛成13・6%にたいし反対は42・2%にのぼっています(日本教育新聞1月7日号)。
法案は国会で徹底審議の上、廃案にすべきです。導入反対の一点で力をあわせましょう。