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2019年10月24日(木)

浸水 高額設備・機材 失った

生業取り戻したい

栃木・佐野

 台風19号による豪雨で栃木県南西部の佐野市内を流れる秋山川が右岸2カ所で決壊するなど、同市では住宅をはじめ約1500棟が床上浸水しました。事業所や店舗が被災した中小業者は、専門設備や機材の損壊で生業(なりわい)喪失の危機と自力での事業再生の厳しい見通しに直面しています。(岡素晴)


 秋山川が決壊した大橋町で、79歳の夫とともに営んできたクリーニング店(自宅兼)が床上約1・2メートルまで水に漬かった女性(70)。ぬれて破損し、引きはがされた板張りの床の残骸がうずたかく積まれたままの店の中で「立ち上がれないよ」と、悲痛な言葉を漏らしました。

数百万かけ導入

 水を使わず溶剤で洗濯するドライクリーニングのための「ドライ機」など二つの設備は、最近数百万円かけて導入したばかりでした。「水洗い機、脱水機、ボイラーも含め全滅。車も1台だめになり、建物修復にかかる費用を合わせれば、家1軒建つぐらいのお金を失ったようなもの」

 年金だけでは暮らせず、元気なうちは夫妻で店を続けるつもりだったという女性。車を失い、被災前から体調が悪かった夫を病院に連れていくこともかないません。「あまりのショックに涙も出ず、パニックの状態がまだ続いている。どうしたらいいか分からない」と語りました。

 秋山川のもう一つの決壊場所、赤坂町で写真や動画の映像企画・制作などを手掛ける会社の社長(51)は、事業に使っていた二つの建物が浸水。カメラをはじめ撮影機材のほか、編集用のパソコン、社用車2台も使えなくなり、損害は相当額にのぼると話しました。

 同社の従業員は10人。被災後も取引先から仕事の依頼は続き、撮影業務の間に会社の片づけをしながら復旧に足を踏み出していますが、事業再建への見通しについては顔を曇らせました。「原状復帰に金融機関の融資を受けたとしても返さなくてはならない。被災して経営が傾いている中で返済できるのか。国には中小業復興のために思い切った支援策を考えてほしい」

必要な支援策を

 被災した中小業者に対する国の支援制度としては、中小企業グループの施設などの復旧費用の最大4分の3を国と県が補助する「グループ補助金」があります。経済産業省によると今回の災害に適用されるかどうかについて「被災の状況を調査し、必要な支援策を検討している」としています。

 社長は「75%が補助されれば相当助かる」と話しますが、これまでの災害での活用例では「申請手続きがとにかく煩雑」「条件が厳しい」などの声が相次ぎました。

 日本共産党の鶴見義明市議は、さらに使いやすい制度への改善も含め、「毎年のように大きな災害が発生しているだけに、再建意欲のある業者の人たちが生業を取り戻せるよう必要な支援を議論すべきだ」と話しています。


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